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「宮永先輩っ!行きますよ!」

「桜子、腕痛い。千切れるから」

「もう買い物するんですッ!後甘い物いっぱい食べます!」

桜子は光を見つけた途端大きな声をあげたのだ。どうも桜子には今回の計画は聞かされていなかったらしい。それを聞けばどうして教えてくれなかったのか、それを光に問い詰める。そんなの知らないと言えば気晴らしに女二人で出かけようと桜子は光を連れ出したのだ。

「言っておくけど4時までだからね」

「分かってますよ!だから急いでるんじゃないですか!」

でも急がれても疲れるんだけれど…。光は小さく溜め息を吐いた。

「にしても、どうして宮永先輩は行かなかったんですか?そういう楽しそうな事好きでしょう?」

「…応援はしてるよ、そりゃね。でも、所詮私達は他人。他人が決めた運命はいつか崩れる。だから反対した。まぁ、良いきっかけになってくれれば良いとは思う」

「…宮永先輩って結構淡白ですよね」

そう?光は首を傾げた。淡白…。あれ、私って結構熱い人間じゃなかったっけ?いつからこうなったんだろう。それは光にも分からない。

「つくしの言い分もシゲルさんの言い分も分かるんだよね。私どっちの世界にも片足突っ込んでるみたい」

どっちの世界?今度は桜子が首を傾げた。そして傾けた先のウィンドウを見て驚いた。

「こ、これ…」

桜子があまりにも驚いているようだから光もそちらに視線を移せば光もそのまま黙ってしまった。テレビにはよく見知った顔がでかでかと出ている。道明寺の顔写真だった。何でも突然消えた為、誘拐の可能性があるという報道。それはあちらこちらの番組でやっているらしく、どれでも全部道明寺の顔だった。近くで配っていた号外を貰うと光と桜子はやはり呆然とする。

「ど、ど、どうしよ!?」

「さ、桜子。落ち着こう。シゲルさんに電話だ、電話」

が、シゲルに繋がる事はない。島に居る為に電波が届かないのだろう。道明寺家の偉大さを思い知らされる。光と桜子はシゲルや西門、美作に何度も電話を繰り返した。

「あ、呼び出しました!」

それを聞いて光は電話をかけるのをやめて桜子の携帯に耳を近づけた。

《もしもーし、シゲルちゃんだよー》

その暢気な声に溜め息が出る。

「今まで何してたんですか!?何度電話したと思って!」

《島じゃケータイ入んないのよ》

「こっちは大変なんですよっ!」

桜子の大きな声が響いた。それを耳元で聞いていた光は一番の被害者だ、と耳を押さえた。

「桜子、それよりも早く状況を」

「新聞、テレビ、街も道明寺さん一色ですよッ!突然消えたから誘拐されたって報道が流れて!顔写真街中にビシバシですよーッ!」

あぁ、もう。桜子声が大きいッ!でもとりあえずこちらの状況は伝えたから後は道明寺さんがどんな対応をするかだろう。

「桜子。これから道明寺さん達がどう出るか、テレビで放送されるだろうね」

「え、何で…?」

「ここまで公にされておいて、何事もありません、なんて言えるはずがないし。それに道明寺さんは今まであんまり公の場に出て来なかったから、記者にとっては絶好の機会じゃないかな」

それじゃあ、私は。光は呆然とする桜子を置いて歩き出した。



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