シゲル、西門と美作、そして強引に拉致したつくしと道明寺はきっと今頃島に居るだろう。それでも光は学校へ来ていた。だが授業を受ける気がしないと非常階段へ来た。ここは確かに静か過ぎて眠くなる。光は日頃の寝不足を癒すように眠りについた。そして肌寒くなってきた頃に目を覚まし、隣を見てぎょっとする。
「あ、やっと起きた」
「……類さん。学校来てたんですか」
「いちお」
授業も受けていないのに一体何をしに来ているんだか謎過ぎる。しかも今日は西門も美作も、つくしもいない日だと言うのに。
「…類さん。…道明寺さん達は今シゲルさん所の島ですって」
「話は聞いたけど、俺にはサバイバルの生活なんて無理」
いやいや、あなたがサバイバル生活する必要は無いと思いますけど…。光は起き上がり瞼を擦った。中途半端に寝たせいで逆にもっと眠くなったような気がする。
「類さんはテレビとベッドがあればどこでも良さそうな気がする」
「…他に何がいるの?」
「えぇー…食べ物とかお風呂とか」
「…水源があれば風呂は入れるでしょ」
島だったら海水とか。海水沸かして風呂に入ったらベタベタしそうだけれど。類の発想力は凄い。光はぼんやりと考える。
「…食べ物は取りますね。魚釣って、食べれそうな果物とか探すんです。きのことかも」
「…あぁー…宮永なら出来そうだよね」
流石に無理だと思うんですけど。一体私にどんなイメージ抱いているんですか、この人は。光は小さく笑いながら横の類を見た。
「ねぇ、類さん。眠い時中途半端に寝ると眠くなりません?」
「なるね」
「後、寝過ぎると眠くなる」
「分かる」
あくびを一つする類はいつでも眠そうな気がした。この人の空気は相変わらずのものだ。光は膝を抱えて目を閉じた。類はそれでも何も言わない。喋らなくても良いというのは案外心地良いものだった。
「…あ、宮永髪切る気になった?」
「……へ?」
いけない。少し寝てたかも。光は慌てて目をこじ開けた。
「ほら、いつか切ってあげるって言ったでしょ」
「…そうですね。もう少し。そうしたらお願いしますよ」
「そう。それにしても宮永って死んだように眠るんだね」
…は?どういう意味だ?光は意味が分からなくて首を傾げた。
「静か過ぎて本当に死んでるのかと思った」
「…私寝てる時静かであまり寝返りとかもしないみたいで。本当に死んでるように寝るらしいです」
それでよく人を驚かせてるんですよ。光は幼い時を思い出す。私が花を好きになったきっかけの男の子。花が好きだからこそ華道の家でもなんとか生きてこられた。なら、私はその男の子に感謝しなければならないね。私はあなたに何度お礼を言っても足りないみたい。
終