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「光!バイト辞めたってホント?」

「あ、おかみさんに聞いたの?そうなの。本当は続けていたかったんだけど、もうちょっとですごい大事な日展ってコンテストがあるから集中しないと」

「えぇー折角また一緒に働けると思ったのに」

「つくしはバイト捗ってる?」

「もちろん!」

生き生きしているつくしに光は微笑んだ。一方光は少し疲れた目をしていた。つくしと同じように授業中に寝ている事も増えた。そしてポケットに入れていた携帯がバイブで震えて目覚まし変わり。光はあくびを一つ手で隠してボーッとした頭で帰宅準備を始める。

「あ、光!お前何で電話出ねぇんだよ」

「…え、…あぁ、ごめん。バイブのままにしてたから気付かなかった」

「これからいつものメンバーで会うんだよ。お前も来るだろ?」

光はジーッと西門を見た。こいつ少しは悩んでいるのか?そんな視線だった。西門はそれに気付いたように目を逸らす。…逃げやがった。心の中で呟いて光は腕時計を見た。

「つか、お前何か疲れてね?目の下の隈。すげぇ」

「…まぁね」

「また習い事か?ったく、俺が見てねぇとすぐ根詰めっからな!お前は!」

保護者顔するなよ、もう。光は小さく溜め息を吐いた。

「…4時までなら」

そして待ち合わせのカフェに行くとそこには既にシゲルが待っていた。そしてシゲルは紅茶を飲んで一言。

「…私、考えたの」

神妙な顔でシゲルは呟いた。それに首を傾げる光、西門、美作の三人。

「つくしと司を誘拐してしまう」

「「「はぁ?」」」

三人の声が見事重なった。

「だって嫌なんだもん!家なんて関係ないじゃん!…家がね島をリゾート開発するんだ。そこに二人を連れて行く」

強行突破と言う事か。それが何かのきっかけとなれば…西門と美作は頷いた。それに対して光は肘をついたままシゲルを見る。

「…私は正直それには賛成出来ない」

「何で!?」

「…そりゃ二人には幸せになって欲しいよ。でもさ、結局はつくしと道明寺さんの問題だよ。他人が決めた運命なんてこの先うまく行かないと思う。最終的に決めるのはあの二人なんだよ」

それは自分が予想してしまった未来。親同士が決めた運命なんてこの先上手く行かない。自分でそう思ってしまったのだ。

「…でもね、それが何かきっかけになれば良いと思うよ。それじゃあ私時間だからそろそろ」

そう言って光は立ち上がった。光が帰る姿を三人は目で追っていた。

「…光、どうしたんだろ。こういう事なら賛成してくれると思ったのに…」

「なぁ、総二郎。光ちゃん最近おかしくね?何か聞いてねぇの?」

「…さぁな。知らね」

そう言う西門の横顔を美作はジッと見ていた。



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bkm
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