そしてつくしが着替えた後皆は部屋に入れてもらった。そして聞くのは道明寺との事。
「で?司どうしてた!?やっぱ鎖でつながれてたりしたわけ!?」
「何で一緒に帰ってこなかったわけ!?いつ帰ってくるんですか、道明寺さんっ!」
「二人共落ち着きなよ。つくしが困ってる」
「ニューヨークのおうちどんなでした?やっぱすごい!?」
人の話を聞いちゃいねぇ。光は溜め息を吐いてつくしの部屋を見渡した。
「司んとこのお母さんに会った!?直接対決した!?一発殴ってきた!?」
「ちょ、ちょっと待って。えーと」
「なになになにっ!」
気になって仕方ないシゲルと桜子はつくしに詰め寄る。
「結論から言うと帰ってこない」
つくしの言葉に皆驚いた。
「あっちで暮らすって言ってた」
「…遠恋ってこと?ニューヨーク東京間の」
「ううん、そうじゃなくて」
「別れんの?」
そう問うとつくしは真っ直ぐな目をしてうん。と言い切った。
「なんで――」
「だってお互い好きなんだよね?なんで別れなきゃいけないの?」
「なんで…なんでだろ」
つくしは何も言えない。そして桜子は理由を探すように類に目をやった。
「どうして花沢さんといたの?もしかしてそれが理由?花沢さんのこと、また」
「よせよ、桜子。牧野も色々考えたんだろ」
「俺は呼ばれたわけじゃなくて勝手に迎えに行っただけ。心配で会いに行った。それで一緒に帰ってきた。ただそれだけ」
そこにつくしのどんな思いが隠れているのか、話を聞いただけでは分からなかった。
「あたしは見てのとおり何も持ってないし、この天井の低いアパートで暮らすのが好き。会社がどうとか跡取りがどうとか言われても全然わからない」
それはつくしの決意。
「道明寺のお母さんが自分の家を守るのに必死なように、あたしもこの空間を守るのに一生懸命なの。ずっと17年間そうやって生きてきた。それが道明寺とつきあってると壊れそうなの。これが別れる理由」
これ以上聞ける事はなかった。どんなに説得してもつくしが折れる事はない。光はそっと目を閉じた。そういう別れ方もあるのだ。お互い納得した上だろう。