つくしが日本を経って一週間後、光は自分の作品を見てもらい着物を着替えようとした時着信を告げるランプに気がつく。
「うわ…」
その着信シゲルさん、桜子、桜子、あきらさん、シゲルさん――…それがずっと繰り返し。光は最後に着信があったシゲルへと電話をかけた。
《やっと出た！今すぐつくしん家集合だよー！》
「は？え？一体何が？」
《つくしが帰ってくんの！》
「えぇっ！？い、今から行く！」
光は着物をそのままに家の中を走り、車を飛ばしてしまった。つくしの家の前に着いても誰もいない。もしやもうつくしは帰ってきていて家の中？光はインターフォンを押した。そしてすぐにバタバタと中で駆けて来る音。そしてゴンッ！と大きな音が響いて、光はその場に蹲った。
「あ、光！もうすぐ帰ってくるから外で待ってよーよ！」
だからってドアを乱暴に開け過ぎだ。光は額を押さえたまま立ち上がれない。
「光？そんなとこでしゃがんで何してんの？」
「シゲルさんがドアを乱暴に開けるから！頭ぶっけた！」
あぁ、本当に痛い。光は目に涙を浮かべていた。
「あれ、宮永先輩着物ですか？」
「うん。電話聞いて慌てて来たからさ」
「牧野ならやっぱ類と合流したってよ。んで今こっちに向かってる」
そうか。それならば安心だ。光は頷いた。そして後ろから顔を出した人間は気まずそうに目を逸らしていた。
「総二郎さん、こんにちは」
そう言うと西門は少し驚いた顔をしてからいつものような笑みを浮かべる。少し出てしまった涙はぶつけたせい。
「着物着てる人間がスニーカーってアホか」
「え？走るのにはこっちが最適でしょうが」
自分の足元を見ればスニーカーだった。草履でも下駄でもない。自分の咄嗟の判断だ。光はおかしくて笑みを零せば西門も笑っていた。そこは何の変哲も無い風景。それに違和感を覚えるのは美作だけ。
「あーっ！帰ってきたっ！おかえりーっ！」
シゲルの大きな声が響き渡った。シゲルの視線の先にはつくしと類の姿。
「び…びっくりした。どうしたの、みんな」
つくしは驚きを隠せなかった。
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bkm