学園内は道明寺の退学の噂で持ちきりだった。
「姐さん!道明寺さんがいなくなったって本当ですか!?これからは姐さんの天下ですね!」
「誰が天下取りですって?英徳の天下なんかいらないです」
日に日にアホ度が増していってる気がしてならない。こんな所で天下を取っても嬉しくない。むしろこうやって囲まれる方が邪魔なんだよ…光は溜め息を吐いた。非常階段に行けばそこに主はいない。主こと花沢類は光達との会話を最後にいなくなってしまった。連絡は取れない。家にも戻っていないらしい。そうなると考えらえる事は一つ。つくしを追いかけてニューヨークに行ったのだ。道明寺家の様子もおかしい。何でも今合併が失敗したと朝刊に出ていた。そのせいか道明寺のニューヨークの家にも連絡がつかない。日本に残された者達は何も知らないのだ。
「あぁー!もう!しつこい!着いてくんな!」
「一生着いて行きますって!」
ふざけんな!ストーカーとして訴えてやる!そう言ってもまるで効果はない。何かこの人達マゾ気質なんじゃないか?いじめてくれってか?光は恐怖を感じすかさず走った。そして光は走っている途中で見知った顔を見た。
「二人共!た、助けて!」
「は?光ちゃ――」
「何だって――」
光の後ろには大の男達。そして自分達を追いかけてくる女子達。
「――とにかくなんでもいいから」
「帰ってこいっ!司ッ!」
お前等がこれが嫌なだけだろーが!私を助けてくれる気はないのだろうか。光は仕方なくそのまま走り続けた。
「ここまで来れば…大丈夫だろ…」
「ったく、司がいねぇだけでこんな事になんのかよ…」
「…ありえない…私そこまで関係無いってのに…」
三人は肩で息をして息を整えた。いつまでも追いかけてくる群衆は学園を抜けるまで続いたのだ。
「…今から戻っても同じ事の繰り返しだな…どっか行くか」
「賛成。光ちゃんは?」
「私制服なんだけど」
「んなの買えばいーだろうが」
そう言って西門は光の背を押した。それに光は振り返ってその顔をジーッと見る。
「さっさと歩けよ」
「…いや、今日は死んだような目、してないなと思って。最近ちゃんと寝れてるみたいだね」
なら良かった。それ以上は何も聞かないと言うように光は自分の足で歩いた。
「あ、今日はあきらさんが服選んで下さいよ。好みの服。着こなしてみせます!」
「いいの〜?そうだな、俺はエレガント系好きだよ」
「エレガント…!着てみたい。さ、行きましょう」
その後ろ姿をしばらく見ていた西門が居た。
終
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