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「本当のお父さんが死んで、母親はすぐに今のお父さんと結婚しました。それで愛なんて信じられないでしょう?前に言いましたよね」

愛とか恋に恵まれてこなかったからと。

「後私中学の時に本当に好きな人が居たんですよ。一般の家の人で。だけどね、おばあ様にその家とはつりあわないから止めろって言われた時、私が直接彼に言ったんです。それでも彼は私の事を追いかけるって言ったけど、嘘だってすぐに思ったし。私、最低でしょ?」

それから中学時代は女子にいじめられてて、総シカトされていたし。

「おばあ様は私が嫌いで、早く嫁に出したくて仕方なくて。でも、私は一番におばあ様に認められたくて頑張ってるんですけど、なかなかうまくいかないし――…でもね、言ってくれたんです、頑張ってるって」

総二郎が?その言葉に光は頷いた。

「私の頑張りは俺が認めてやるからって。私は頑張っていてすごいって。……私はねやっぱり普通の人間だから、誰かに認められたかったんです。それを認めてくれた、それだけで私は充分――」

「嘘だよね、それは」

光の言葉を美作は遮った。そして真っ直ぐの視線を光に送る。

「光ちゃん。本当にそれだけで充分だなんて思ってないだろ?そう思ってんならもっと上手く笑いなよ。涙なんか流さないで」

光はそっと自分の頬を撫でれば指先が濡れた。

「…そういうのを好きって言うんだよ。誰かを想って泣ける事」

「……あーあ…!こんな気持ち、ずっと忘れてたのになぁっ…!」

あの時、あの場所に置いてきたつもりだったのに。いつの間に私の中に帰ってきていたんだろう。光は口元を押さえたまま天井を仰いだ。そこは見慣れた風景だった。最近よく見る歪む視界。

「…光ちゃん」

「でもねっ、あきらさんっ。本当に言わないで下さいっ!私は、大丈夫ですからっ、いつも通りやる自信があるんですよっ、これでも」

光は笑う。涙を流しながら笑う彼女は美しいと思った。美作はそんな光を抱きしめた。

「…うん。俺と光ちゃんの秘密な。絶対に言わない、もう何も言わないから」



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bkm
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