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「最近お前もクラブに慣れてきたんじゃね?」

「まぁね。一人で行けちゃうよ」

「いやいや。そんなのナンパしてくれって言ってるようなもんじゃねぇか」

「たまにはナンパされたいじゃん?でもさ、身近にナンパの貴公子が居るせいか、どれもしっくりこな――…」

皆と別れて西門の家に行こうとしていた。それは何も変わらないよくある光景だった。が、光は家の前で一人の影を見つける。

「優紀…ちゃん?なにしてんの」

西門の家の前に居たのは優紀だった。光はそれを見て驚いた。簡単に諦めないとはそういう事か。光は西門よりも先に優紀に近付いてその肩をポンッと叩く。

「…昨日のメンバーとの帰りなだけだから」

何の言い訳だろうか。一緒に同じ家に入ろうとしていたくせに。光はそのまま走った。

「おい!光!」

「私もそこまで野暮じゃない!」

それだけ言った光はすぐに見えなくなった。全力でいなくなったのだ。そして光はすぐに立ち止まる。彼女は本気。その本気はもしかしたら誰かを変えるかもしれない。そんな不安が光を襲う。

「あぁ、もう!シゲルさんのせいだ!」

光はポケットから携帯を取り出してシゲルに電話をかけた。

《もしもーし!シゲルちゃんだよー!》

「もう、シゲルさんに借りた漫画、何ですか、あれ!」

《え、それがどうしたの?》

ヒマな時に読む漫画を持っていないか、とシゲルに聞いたらこれがおすすめと一つの少女漫画を光は受け取った。その漫画の主人公は純粋で恋の一つもした事がなかった女の子。その子が恋をしたのは軟派な男。相手にされなかった女の子は自分を誠心誠意伝える。そしてその男はその子に恋をした。そんな内容。

「軟派な男が恋をするのってどうして自分を変えてくれた女の子って決まりがあるんですかね?こう今まで付き合ってきた女の子とはまた違うタイプの」

《えぇー!当たり前じゃん!今まで付き合ってきたのと同じだったら、何の変哲も無いでしょ?純粋な乙女が頑張るから物語になるって事だよ!》

なら私の恋は物語にはならないって事か。自分で聞いておいてなんて酷い仕打ちだ、光は頭を抱えた。例えばの話。総二郎さんが本当に優紀ちゃんに恋に落ちたらどうしよう。身を引くって決めていたじゃない。私がそう言ったんだ。

「あ、もしもし。おかあ様ですか?夜分遅くにすいません。はい…はい。どうしても今の内に言っておきたい事があって」

私の決意が変わらない内に。

「…もし…今後もし――…総二郎さんが私との婚約を破棄したいと仰ったら、その時は何も聞かずに了承してあげて下さい、お願い致します」



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