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「ありがとう、俺も優紀ちゃん好きだよ」

好き、それは私も言われた事がない言葉だった。彼はいつも気に入っているとは言うけれど、好きとは言わなかった。そこで差がついていたのだ。

「寒いね。中入ろ」

「西門さん…あたし本気で言ってるんです」

「女の子の本気の顔っていいよね。すっげー綺麗に見える瞬間だよな。でも、ちょっと重いんだわ。優紀ちゃんは俺に何を望む?デートしてほしい?キスしてほしい?抱いて欲しい?どれもしてあげられるよ。それだけなら」

その言葉はまるで自分に言われているようだった。この人に期待をするだけ無駄。私はそうやって諦めている。その時乾いた音が響いた。優紀が西門を叩いた音だった。

「ごめん…なさい。でも、ひどいです。そんないいかた」

「前にも言ったろ?俺はいい男だけどいい奴じゃないって。いい奴を見つけなよ。その方が優紀ちゃんには合うって」

「西門さん。西門さんはこうも言いましたよね?好きな女大事にできる奴はいい奴だって。あたし思ったんです。西門さんには大事にしたかった女の子がいたんじゃないかって。そうして他の大勢の女の子に逃げるんですか?」

優紀の凛とした声。それに対して西門は笑う。

「優紀ちゃん。知ったようなことを言うな。俺はそういう女がいちばん嫌いなんだよ」

私は多分総二郎さんを一番嫌う、知ったようなことをいう女だ。そしてすぐに体を預ける手頃な女。あそこでもし私が体を許さなかったら何か変わっていたのだろうか。いや、今の私がこれなら何も変わっちゃいない。

「あつっ…」

光は煙草を落とした。そして指先が赤くなっていた。熱いのにそれすらも気付かなかったのだ。そして光は新しい煙草に火を点けた。この状況に喜んでいるような自分が居た。醜い自分を見つけてしまった。やっぱり私はどこまでも汚い女だった。



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bkm
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