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光はその日、涙を流した。涙の意味が自分でも分からない、そんな涙だった。

《もしもし?光ちゃん?》

それは珍しい人からの着信だった。

「優紀ちゃんじゃん!わー久しぶり。急にどうしたの?」

《…ちょっと聞いて欲しいと言うか、聞きたい事とか、お願いがあって…その、これから時間あるかな?》

「うん。大丈夫だよ。じゃあ待ち合わせは――」

《分かった。待ってるね》

それだけ言うと電話は切れた。優紀ちゃんがお願いをするなんて初めてだし、聞いて欲しい事も初めて。友人に頼りにされるという事は光にとってとても嬉しい事だった。つくしの事だろうか。総二郎さんに話を聞いてなんと思ったのだろうか。それをきっと私に相談したいに違いない。

「あ、優紀ちゃん!おまたせ。待たせた?」

「ううん、大丈夫」

嬉しい気持ちが先走る。ホットカモミールティーを頼んで光は目の前の優紀の顔を見た。

「聞いて欲しい事って?つくしの事?」

「え?あ、うん」

「つくしと道明寺さんが付き合っても、私達が優紀ちゃん家と和也君家を守るって決めたから心配しなくても良いよ?」

「…あ、うん。それは昨日西門さんに聞いたんだ」

もし家庭がピンチになっても、あたしもつくしみたいに家族団結して戦うよ!そう言うのは前向きになった優紀。

「え?じゃあ、聞いて欲しい事って?」

「…そ、その…西門さんの事」

「…総二郎さんの…?」

この先なんて誰にだって予想は出来る。だからこそその名前を聞いた時点で驚いたのだ。

「…あ、あたしね…!…西門さんの事、好き、みたいで」

「…うん」

「光ちゃんは婚約者って聞いたから…、その、どうなのかなって…」

優紀ちゃんは卑怯だね。先に好きだ、なんて言われたら私の選択肢には応援する、しかないと言うのに。

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bkm
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