「あ、光!良い所に!」
「つくし?これからお昼?一緒に食べようか」
光とつくしはそのまま学食へと向かった。そしてBランチをテーブルに置いて、自分も座ってから光はつくしを見た。
「あのさ、私新しいバイト見つからないから戻ろうと思うんだけど、さりげなくおかみさんに言っててくれない?」
「うん、いいよ。話は…それだけって顔じゃないね。つくしは嘘が下手だ」
聞きたい事なら山ほどある。だけれどそれを口にしないのが光の優しさ。本当は聞きたくて仕方ないというのに。
「…つくし?」
光はそっとつくしの頬に手を伸ばした。つくしが泣きそうな顔をしていたからだ。
「…あたし、亜門…あの清永と付き合う事にした」
「…そう。それもそれで良いよね」
「…止めないの?」
つくしの言葉に光は笑ってみせた。
「どうして止めなきゃいけないの?」
「せ、せめて理由を聞くとかさ!」
「つくしが言いたいなら聞くけど、無理をさせるようなら私は聞かない」
言いたいの?聞いてほしくないの?さぁ、どっち?そういう光につくしは不器用な笑みを見せた。
「…光には言うね。実を言うと椿さんには言ったんだ」
椿さんに会ったの?つくしは小さくうん、昨日ね、と言う。
「…あたし……本当はあいつの事好きだった…だけど、これ以上、もうさよならしたくない…一緒に居るとまた何度もさよならしなきゃいけない…あたしはもうそれに耐えられんないっ…!」
…そう。光はつくしの頭を優しく撫でた。
「それがつくしの答えなんだね」
「……住む世界が違うとこうも苦労するんだねっ…」
「…ねぇつくし。つくしは住む世界が違うとかよく言うけれど、実際はここ以外何も無いよ。私はつくしに触れるもん」
頭に乗せていた手を外しつくしの手を握った。
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bkm