「あぁーあ、我慢するの疲れた。総二郎さんケーキ食べたい」
「どうぞ、ご自由に」
何で目の前にいるのがこの人なんだか。最初はそう思った。が、光がショートケーキを食べる間西門は何も言わずにモカを飲んだり、美味しそうに食べる光を見ている。
「美味い?」
「うん、美味しい。食べたい?」
ん、と口を開くものだから光は仕方ないな、とケーキをフォークですくってから西門の口元へ持って行った。
「ね、美味しいでしょう?」
「まぁまぁ。悪くはないな」
流石おぼっちゃん。こんな美味しいケーキをまぁまぁだなんて。もう二度とあげないよ。いらねーし。普通の会話。デートだって言うから青山だの、何かすごい所に連れて行かれるかと思えば、普通のカフェ。しかも初めてではない。そもそもこれがデートと言うのなら私達はとっくに初デートを終えていたのだ。私に気を遣ってくれたのかもしれない。
「総二郎さんは人としては優しいのかもね」
「人としてはって何だよ」
「男としては最低かなって」
「しみじみ言うな!それに俺は人としては悪い奴だけど、男としてはいい男なの」
どういう意味だかさっぱり分からない。私はこの人の男の部分なんて見た事がないからだ。それから二人は何気ない話をした。どこの和菓子が美味しいか、最近誰の作品を見たか、何の着物の柄が好きか。二人はきっとお互い好きな話題ではない、ただ知っているだけ、得意な話なだけ。お互い忙しい身、早い時間でデートは終わったのだ。デートというならつまらないデートだった。
終