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「親はいつか自分より先に死んでしまうから、それまでには親孝行したい。もし私がおばあ様に気に入られたら、お母様が喜ぶでしょう?だから、それで良い」

「自分を犠牲にしても?そりゃ押し付けがましいな。お前の本心じゃないと見た」

クイズか何かと思っている?光は小さく笑った。

「正解。…実際はそんな事思ってない、ごめん、嘘。だってさ、お母様が再婚したのはお父さんが死んで…えっと籍入れられるようになってすぐ。そこで再婚とか言われてもさ、私は嬉しく無いし、新しいお父さんなんていらないって時期」

それでも母は結婚してすぐ宮永家に入った。

「そこからは地獄!普段外で駈けずり回って怪我ばっかしてた女の子が急に家でお上品に、言葉遣いに気をつけて、勉強しなさい、なんて。正座なんてまともにしてこなかった私が、だよ?」

「何か話逸れてね?」

わ、そうだった!光は慌てて話題を戻した。

「今でもお母様を許していないし。愛とか恋とかそういうのも信じていない。必ず壊れるって思ってる。だからね、私は例え好きな人が出来ても何も言わない自信がある」

始まれば終わりを想像する事なんか容易かった。

「きっと運命の人には出会わずに終わるんだよ、私の人生」

「何が運命の人だよ、さみぃな」

「私の運命の人はきっと生涯一人で終えるの。かわいそうな事したなぁ」

ありえねぇな、西門は光の言葉に笑って返した。

「それにしても総二郎さんは野暮な事を聞きすぎ。自分は言わないくせに私の事だけ聞きだそうなんてひどいよ」

「そうだっけ?」

「そうでしょーが!じゃなかったら私、総二郎さんに聞きたい事あるよ?私との婚約は嫌じゃないのかとか。このまま結婚しても良いのか。一度だけの恋愛はどういう風だったのか。それにこの先本気で誰かを好きになったらどうするのか、とか」

どれも面倒だ、何も聞くな。西門は光の頭をぐしゃりと撫でた。

「さて、さびしんぼーいが戻ってきて楽しくなったからこのままどっか行こーか!」

「お前さっきあんなに寂しくないって言ったくせに!素直じゃねぇな、ホント」

「最後に寂しいって言ったでしょう?あれ、本当だよ?」

「……ったく、急にそんな甘えた声出してんじゃねぇよ!調子狂うっての!」

「あ、総二郎さん、もしかして私に惚れた?」

うぜぇ!そう言いながら総二郎は光の手を引いて歩いた。この小さな手で自分よりも大きな物を抱え込んでいる光。いつかそれが壊れた時、何かの拍子に切れてしまった時、自分は何かしてあげられるのか。この子の支えになってあげられるのか。



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bkm
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