光はバイト終わりに携帯を取り出した。ここ数日で色んな事があったからな…。そろそろあのさびしんぼーいの機嫌も直っているかもしれない。光は西門に電話をかけた。
《……あーもしもし？》
西門の声が遠い。辺りはガヤガヤとしている。クラブにでも行っているんだろうか。どうやら怪我は完治したようだ。
「…もしもし、光です。ちょっと色んな事があったから報告に。今時間大丈夫？」
《ちょい待ち。外出るわ》
えぇー…と言う声までもご丁寧に西門の携帯は声を拾う。
《ＯＫ。で、どうした？》
「順を追って話しますね。合コンの話、少ししたけど。それに参加したら、道明寺さんそっくりの男が現れたそうです。で、それからつくしは二日行方不明だと思ったらその男の家で寝込んでいたとか」
《何だ、牧野はとうとうやっちまった？持ち帰られた？》
…ここまで私と同じ反応かよ。つくしが言うように私もこの人に毒されてきた…？それってどうなの、光は溜め息を吐いた。
「違います。何かとつくしに絡んでくる男がどうも道明寺さんの従兄弟らしくて。しかもその合コンも仕組まれたものらしく、参加した男メンバーに聞いても誰も知らないって」
《司の従兄弟？そんな話、聞いた事ねぇけど》
「どうも道明寺さんも知らなかったらしいけど、本当にいるそうです。今道明寺さんとあきらさんはその従兄弟の事調べるって。本当に道明寺さんそっくりらしい」
《何か面白い事になってんな！》
何も面白くねぇーよ！この状況考えてみろよ！また一波乱あるかもしれないって言うのに…。
「私達が集めた情報はそこまで。もしかしたら進展あるかもしれないからあきらさんに聞いてみたら？」
《だな》
「仲違いしている場合じゃないかもよ、さびしんぼーいさん」
《だから！そのさびしんぼーいはやめろっての！》
現に今寂しくはね――…西門がそう言った時少し遠くから声がした。いつまで経っても戻ってこない西門を呼びに来た高い声だった。
「…あ、ホントだ。寂しくないね、それじゃあ」
光はからかうように声を出した。
《だろ？ま、俺も話聞きに行くわ。そんじゃーな》
今行くから待ってて――光はその後すぐに機械音を聞いた。ツーツーと自棄に虚しい音だと思った。光の周りには道端で止まっている光を怪訝そうに見る目。
「寂しいのは私の方みたい」
小さく笑ってから歩き出した。
終
prev next
bkm