「あ、光。その肉美味しそう!一口ちょうだい!」
「ん、どうぞ。代わりにシゲルさんのカリフラワーちょうだい」
野菜食べたい。なんとも仲が良さそうな風景だった。こんな日が来るなんて思わなかった。なんせ少し前までは全く知らない人同士だったのだから。それは誰のお陰なのか、考えたらすぐに出てきた。
「…私達って…牧野先輩がいなかったらこうやって一緒に食事する事も無かったんですかね」
桜子の言葉に光とシゲルは黙った。確かに光は西門の婚約者、シゲルは道明寺の婚約者、桜子は道明寺に片思い。一見近いように思えるがまともに喋る機会はきっと無かっただろう。
「あ、そっか。そう言えばそうかもね」
光もそういう風に思った事があった。桜子の言葉がしっくりとはまる。
「私友達いなかったからなー!何か合わないんだよね、学校の人と」
そりゃシゲルさんみたいなタイプのお嬢様はどこ探してもいないわ、光は小さく笑った。
「私も。私は家に縛られてて、毎日習い事習い事。人と遊ぶ時間も余裕も無かったからずっと一人」
「…私もなんですよね。友達らしい友達って言うか…心底冗談言い合える人っていなかった」
「そりゃいないよ!桜子言葉きついもん!」
「確かに!」
桜子の言葉にシゲルと光は声を出して笑った。
「私達って結構似てんのかもね」
つくしが繋げてくれた輪。だったら私はつくしの為に出来る限りの事をしよう。皆がほんわかとした空気に包まれてる中桜子の携帯が鳴った。席を外す桜子。一方光とシゲルは残していて料理に手を伸ばす。
「光!もっと食べないと!細すぎ!ガリガリじゃん!」
「失礼な。出てる所はちゃんと出てる。シゲルさんこそもっと食べて……いや、この際だから食べ比べでもしてみようか」
「お、いいねそれ。負けたらバンジーとか」
「私バンジー怖くないけど――」
「ちょっと!二人共、何そんな色気の無い話してんですか!外出ますよ!」
へ?何で?二人は桜子の言葉に首を傾げた。
「美作さんがこの前の合コンの話を聞きたいって。美作さん達も調べてるだろうし、その話聞きに行きましょう」
それもそうだね。光とシゲルは残っていた料理を慌ててかきこんだ。それに溜め息どころかひく桜子。
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bkm