「変装じゃないですよ。敵に襲われなくなるかなぁって」
「はぁ?」
突拍子の無い光の発言に西門はポカンと口を開いた。
「例えばね、ふわふわしている髪で目がぱっちりしている今時の女子高生と、お下げで眼鏡かけた女子高生。どっちを襲う?」
「今時の女子高生」
「でしょう?」
光の説明はそれで終わりのようだった。意味が分からねぇ!思わずつっこむも、光は笑うだけだった。これ以上の説明はする気がないらしい。
「あーあ、いじめられたらどうしよう」
「知らね」
「お前が原因だって忘れるなー。なんとかなるかなぁ」
光はうーんと背筋を伸ばしてからその場に寝転んだ。今日は空が綺麗だ。水色の空に真っ白の薄い雲。ぼんやりと見上げていると眠たくなってくる。
「なぁ、デート。デートしよう」
こいつの感覚は一体どんなんだろう。普通のデートをすれば普通に喜ぶ、はずがない。だからこそ気になる。
「時間無いって」
「時間あったらデートしてくれんの?」
「…そうだなぁ。考えてあげても良い」
「言ったな。次のゲームは俺が光の時間を作れたら。景品はデート」
西門の声がどこか楽しそう。こんな生意気な奴を目の前にして何が楽しいんだか。光は目を閉じながら考える。
「…ねぇ、私デートに誘った所で楽しい事何もないですよ。簡単に足開きません」
「足っておい!恥じらいってもんねぇのか、お前は!」
そんな物持ち合わせていませんよ。そう口を開こうとした瞬間、光の目がぱっちり開いた。目の前に広がるのは先程の青空ではなく人。
「…何してんの」
「何で気付く?」
「気配」
人が目を閉じている隙にキスしようだなんて。西門の顔が光の視界いっぱいにある。
「いや、俺目を閉じてる子みると自然と体が動く…条件反射?」
西門の言葉に光はそのまま口元を押さえてぷっと吹き出した。
「あはははっ!変なの!総二郎さんって変!」
何こんなに爆笑してんだよ。西門は光から体を退いて、笑いこける光を横目で見た。グルグルと汚い雨水ポンプの上をよくもまぁ。なんて言う冷たい目。
「お前そこ汚くね?」
「うわ、やべっ!」
ったく、これのどこが令嬢だよ。西門も小さい笑みを零した。
終