疑問に思ったが、光は美作に言われた通りテラスへ出た。
「出ましたけど」
《俺さ、この前総二郎に光ちゃん取っていいか聞いたんだよね》
「……は?」
一体何の話だ?光の頭の上にはクエスチョンマークだけだ。
《そしたらそれは光ちゃんの意思だって言うけど、俺には光ちゃんは扱えない、だと》
「…はぁ…確かに私ガサツですから、あきらさんはちょっと厳しいかも」
《同じ事言われたよ。でさ、さっき俺の電話を総二郎が取ったでしょ?》
「はい」
《…何か思わない?》
何が言いたいのだろう、あきらさんは。光は考えついた事は言わずに言葉を濁す。
「…あきらさんは何か勘違いをしています。総二郎さんは私を好きになりません。そもそもあの人は誰も好きにならない、頑なにそうしていると思います」
《…まぁ、そうかもしれないけどさ、光ちゃんは総二郎に素敵な恋をしてほしいって言ったけど、その相手が光ちゃんの可能性、あると俺は思う》
その言葉に光は黙った。なんと言ったら良いのか分からないからだ。自分の中にある確かな気持ちは口にしてはいけない事を知っているからこそ。
《ま、それは会った時話そうか、今すぐ集まれる?》
「はい、行きます。それじゃあ後で」
電話を切って未だ疑問が残る光は部屋の中へと戻った。
「総二郎さん、つくしが見つかりました!それでね、今道明寺さんと花沢さんが迎えに行ってるそうです。多分つくしの事の話し合いと、後は出迎える為に私は行ってきます!総二郎さんは行かない…よね」
この不機嫌そうな顔は絶対に行かないだろうな。
「…なぁ、光。あきら、なんて?」
「だから、それを聞いて…何でまた」
何でそういう事を聞く?もしかして、あきらさんが言ったように、私に少なからずの好意を抱いている?…勘違いしそうになる。言われたばかりだから。美作の言葉が光の頭の中で響く。
「別に。早く行って来い」
「…ここに帰って来ても良いって事?」
「勝手にすれば」
「総二郎さん、怒ってるんだか優しいんだかよく分かんないね」
その顔を見てやれ。光は総二郎の前にしゃがみこんでその顔をじっと見た。西門は光の後頭部に手を伸ばして引き寄せ、軽いキスをした。突然の事に呆然とする光。
「………」
何も言えなかった。そして行為無しで冗談無しのキスは初めてだった。光の頬は急に赤くなる。
「何でお前顔真っ赤にしてんの?」
「だ、だって!総二郎さんが悪いんじゃん!急に来るから!あぁ、もう!行ってくる!」
「行ってらっしゃい」
空気読めない!何なの、今のキスは!バカじゃないの!光の足はどこか重い。そして廊下の途中でしゃがみこんだ。
「……バカ」
これからどうやって隠せば良いの。総二郎さんの行動一つ一つに意味を探しちゃうじゃんか。
終