「べつにいつもやってることじゃんか。最近皆で夜遊びってやってなかったろ。久々にいーなって言ってたんだよ。どうせなら大勢でさ。類も誘ったんだけど、あいつ例によってまた寝てる」
「――そういうの何つーか知ってるか?うざってえんだよ。ベタベタしやがって。気色悪いんだよ」
機嫌が悪いと言うレベルじゃない。つくしがいないだけで道明寺の心はこんなにも荒んで、誰の言葉も聞き入れない。それほどつくしが大事で、つくしじゃなきゃだめで。道明寺の言葉に反論したのは西門。
「…そういう言い方はねえだろ、司」
「総二郎よせ。司もいいすぎだぜ」
美作のフォローも届かない。
「俺がなんか頼んだか?くだらねえ友情ドラマのために呼び出すんじゃねえよ」
「……ちょっと仲良くやろうよー」
「そ、そうですよ。ね、総二郎さん」
まだそっちの方が説得出来るだろう、光の考えも無駄に終わる。
「女にふられたぐらいでグダグダしやがって」
「総二郎っ!やめろって!」
「てめえの方がうざいんだよ」
西門の言葉に道明寺のかんに障り、パンチを一つ。辺りに悲鳴が零れる。
「二人共やめろって」
「…おまえがそんなんだから牧野にふられんだよっっ!」
反撃したのは西門の蹴り。そこからは応酬の繰り返しで立派なケンカになってしまった。
「うっせえ!てめーには関係ねえだろっ」
「行けっ、そこだっ」
隣でシゲルが盛り上がっているのを見て光も我に返った。いけない、今私も普通に応援しそうになった。
「…おまえら先帰ってろ」
美作の言葉に桜子と和也、そして桜子に連れて行かれたシゲル。光は動こうとしなかった。
「光ちゃんも先に帰って――」
「大丈夫です。自分の身は自分で守ります。…それに総二郎さん、私に言ってくれました。道明寺さんは殴ってでも止めるって。だから、私は見ていようと思います。私はきっと見ていなきゃいけない」
光は笑った。隣の美作はそれに目を奪われる。これは完全に恋をする女の子の目、笑顔。この前は否定したけれど、やっぱり――…。その瞬間光の手が美作の頬にシュンと出てきた。その手にグラスが当たる音。光の手に当たったグラスは床に落ちて美作の足元でパリンと音をたてて割れた。
「あきらさんも自分の身は守らないと。折角綺麗な顔なのに傷がついちゃいます」
一瞬の恐怖心を抱いた事は一生内緒にしておこうと思った。
終
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