「…ねぇ、総二郎さん」
「ん?」
「…いっつもごめんね。私総二郎さんにいっぱい迷惑かけてる」
「確かにな。お前はいっつも一人で突っ走り過ぎなんだっての。たまには相談の一つくらいしろっての。心配するこっちの身にもなってほしいぜ」
ごめん、光は小さく呟いた。
「でもまぁ、そんな婚約者の世話にもだいぶ慣れたもんだよ、俺は」
「……私達、婚約者じゃなかったら出会わなかったんだよね」
「だな。…いや、案外司と牧野みてぇにケンカみてぇな出会いがあっかもよ。ほら、お前最初に俺に言っただろ?世の中の女全員あんたを好きになると思ってんじゃねぇーよって。ありゃ今思い出してもお笑いモンだぜ」
「そうなの?怒らなかった?」
「怒ったっつーよりは衝撃的っての?今まで俺にそんな事言う女いなかったからな。司と似たよーなもんだよ、俺も」
くつくつと西門は笑った。その動きが心地良くて光は西門の胸に耳を寄せた。ゆっくりと聞こえる心臓の音。誰かの心臓の音をゆっくり聞くのはどれくらいぶりだろうか。
「……総二郎さん、少し寝ても良い?」
「おう。少しと言わずずっと寝てろ」
「…じゃあ、キスで起こしてね、王子様」
「いやいや、俺悪い王子だよ?そのまま食っちゃうかも」
「それじゃあおおかみだね」
光は小さく笑った。目を閉じてすぐに光の寝息が聞こえる。その目には涙が溜まっていた。そんな光を見て西門はその涙を拭うキスをした。
終
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