「よし、牧野んとこ行くぞ」
嘘をつけるか心配だけれど、話を合わせていればなんとかなるだろう。光も西門と美作の後を着いて行った。
「牧野――」
「あっ、おはよ。西門さん、美作さん、光も!」
「おーっす。昨日はおつかれっ」
「あっ、昨日は二人共ありがとうっ。そ、それで西門さん。あのあと優紀と二人でいなくなっちゃったけど、ちゃんと優紀を送ってくれました?」
「あったりまえじゃん。――…でもさーあの子かわいいよねー」
「えっ、ええ!?」
「なんつーか、守ってやりたくなるっつーかさ」
その言葉につくしは息を飲んだ。青色も悪くなっていく。
「あの、それは一体どーゆう意味で…」
「――どーゆー意味ってそのまんまだけど?」
そう言う西門の笑みはどこか不敵に。
「冗談じゃないわよォッ!絶対ダメッ!あんたの毒牙にかかったらあの子再起不能になっちゃうわよっ!」
「毒牙ぁ?赤い薔薇の棘とかゆってくんない?」
「バカッ!そんな品のいいもんかいっ!コブラの毒よかタチ悪いわよっ」
「つくしって単純ですよね」
小声で美作に向かって呟けば、美作も頷いた。
「もう周りの声聞こえてねぇよ、ありゃ」
「でも、実はもうデートにこぎつけちゃった。あーあ、明日が楽しみ。4時に彼女の家に迎えに行くんだよな」
わざとらしい台詞も今のつくしにとっては普通の言葉に聞こえる。そして西門は機嫌を良くしたまま去って行った。
「牧野すげーやべーよ。総二郎のテク知ってる?この耳元で囁くだけで女の腰グニャリッ。ホテルまで1分」
つくしは呆然としたまま光を見上げた。当然助けて、という視線だ。
「ん〜私からは何も言えないよ?私達は形だけの婚約者だからね。総二郎さんがそうしたいって言うなら私は何も言わないし……でもね、総二郎さんは本当に危険…会った初日でも余裕で手ぇ出そうとしてくるよ」
「もう彼女あさってにゃ女になってかもしんねーな」
「…優紀ちゃんが拒否しなきゃね」
うんうんと頷きあった光と美作。
prev next
bkm