「ちょ、一体どういう事だよ!美佳っつったじゃねぇか!」
「私が?誰が私の名前が美佳って言ったよ?勝手に勘違いしたのはそっちでしょーが。バーカ」
「てめぇ!」
「…私を殴ろうなんて百年は早いっての」
光は殴ろうとしてきた中塚の手を払い、顔にストレートを綺麗に決めた。
「女殴ろうなんて最低。それ以上腫れなきゃ良いけどね」
光は小さく呟いた。それでも笑顔だった。
「さて、どこ行く?」
「…さっきから西門さんを見てる女の子がいるんだけど」
「そうなの、ごめんね。俺今本命いるからさ」
そう言うと西門は歩いて優紀を引き寄せた。辺りではきゃーという声が響く。
「ゆ…優紀!」
「優紀ちゃん、こいつと知り合い?」
「…知らない。同じ学校だけど顔だけ見た事あるぐらい」
優紀は誰かに頼る事も無く、中塚に仕返しした。これでこの話は終わるだろう。
「総二郎っ!」
「おー司っ!」
遠くに道明寺とつくしがいるのを確認して、光はそっと総二郎に近付いた。
「…これ以上ここに居たらまずいから帰るわ。じゃ、あいつなんとかしてよね」
「お、おい!光!」
えっ、どこに光が!?つくしと優紀は慌てて探すもそこに光の姿は無かった。そして光は外に出てすぐにタクシーに乗り込んだ。クラブなんて一人で行ったとバレれば何を言われるか分からないし、騒ぎが大きくなってしまったら大変な事になってしまう。でも、こんな格好をして一人でクラブ入るのが少し緊張して楽しかった。優紀ちゃんには総二郎さんと、つくしが着いているから大丈夫だろう。そう窓から空を見上げる光の顔は笑顔だ。とりあえず誰かに喋りたい気分。
「あきらさん、あきらさん!今日面白い事あったの!」
《…あのさ、光ちゃん。今2時だよ…?》
「ごめんなさい、でも楽しかったから。あきらさんにも教えてあげようかと思って」
終