「司と牧野のデートの話をしっかりと聞かねーとな!」
「相変わらずね、総二郎さん…」
怒られても知らないよ、私も気になるけどさ。そういう光を西門はジッと見た。そして光もその視線に気付く。
「…何?」
「何でお前何の変化もないのかなぁと。ここで照れたりとか、俺に惚れたりとはそれはないのか?」
西門の言葉に光は声を出して笑った。勘が良い相手を前にすると少し困ってしまうけれど、自分を隠すのは得意だった。
「確かに泣いたのは失態だけど、初めてでも無いし、何、それとも総二郎さん、私に惚れて欲しかった?」
「ねーわ!」
でしょう?クスクスと笑う光を見てほっと西門は息を吐いた。
「やっぱり光はそーこなくっちゃな!」
ここで惚れられても、どうせ俺は誰も好きになったりはしねーし。この着かず離れずの関係が俺にはちょうど良いのだ。普段通り何も変わらない光に安堵した。
「それにしても道明寺さんが庶民のダブルデート。……何か起こっている気がしてならないのですが」
いやいや…。流石に付き合って4日だぞ?何か起こるにしちゃ早すぎる。そう思っていても嫌な予感。そして帰ってきた道明寺は軽く挨拶するとシャワーを浴びると隣の部屋に行ってしまった。
「…何かあったんですかね」
「その内牧野も来るだろ」
「道明寺!」
少し遅れてからつくしはやってきた。そこに笑顔は無い。
「お、おっかえりィ。どーだったダブルデートは?」
「なんで一緒に帰ってこねーんだよ」
「道明寺は?」
「へ?司なら隣の部屋でシャワー…」
それだけ聞くとつくしは隣の部屋へと向かって行った。シャワーだと聞いたにも関わらず行くという事はよっぽどの事で、一体何があったのか、気になって様子を見に行くとやっぱりと言う感じに言い争い。
「バカ言ってんじゃねえよ!なんで俺があやまんだよっ」
「おいおい、雲行きあやしーぞ」
やっぱりか…。光は溜め息混じりに呟いた。
「だってあれから大変だったのよ!?勝手に殴って勝手に一人で帰るなんてひどいじゃん!」
「知るか。あんな便所虫みてーな男。殺してもたんねえよ」
便所虫?優紀ちゃんの彼氏の事だろうか。光は優紀と彼氏の話をした事が無いので知る由も無い。
「何があったの?何されたの?」
「………言いたくねえ」
「なんでよ。言わなきゃわかんないじゃないっ」
「ムカついたから殴ったんだよっ」
それを聞くとつくしは道明寺を平手で叩いた。
「なにすんだてめえっ」
「ムカついたから殴った」
あぁ、もう。二人のケンカがまた始まるのか。この二人って実は似た者同士なんじゃ、そう思ってしまうくらいだ。
「あたしもあの中塚ってひとキライ。正直あんたが殴ったとこみてスッキリした。でもそれとこれとは別。どんな理由あるにせよ暴力はよくないっ」
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bkm