88 [ 1 / 2 ]

「司と牧野のデートの話をしっかりと聞かねーとな!」

「相変わらずね、総二郎さん…」

怒られても知らないよ、私も気になるけどさ。そういう光を西門はジッと見た。そして光もその視線に気付く。

「…何?」

「何でお前何の変化もないのかなぁと。ここで照れたりとか、俺に惚れたりとはそれはないのか?」

西門の言葉に光は声を出して笑った。勘が良い相手を前にすると少し困ってしまうけれど、自分を隠すのは得意だった。

「確かに泣いたのは失態だけど、初めてでも無いし、何、それとも総二郎さん、私に惚れて欲しかった?」

「ねーわ!」

でしょう?クスクスと笑う光を見てほっと西門は息を吐いた。

「やっぱり光はそーこなくっちゃな!」

ここで惚れられても、どうせ俺は誰も好きになったりはしねーし。この着かず離れずの関係が俺にはちょうど良いのだ。普段通り何も変わらない光に安堵した。

「それにしても道明寺さんが庶民のダブルデート。……何か起こっている気がしてならないのですが」

いやいや…。流石に付き合って4日だぞ?何か起こるにしちゃ早すぎる。そう思っていても嫌な予感。そして帰ってきた道明寺は軽く挨拶するとシャワーを浴びると隣の部屋に行ってしまった。

「…何かあったんですかね」

「その内牧野も来るだろ」

「道明寺!」

少し遅れてからつくしはやってきた。そこに笑顔は無い。

「お、おっかえりィ。どーだったダブルデートは?」

「なんで一緒に帰ってこねーんだよ」

「道明寺は?」

「へ?司なら隣の部屋でシャワー…」

それだけ聞くとつくしは隣の部屋へと向かって行った。シャワーだと聞いたにも関わらず行くという事はよっぽどの事で、一体何があったのか、気になって様子を見に行くとやっぱりと言う感じに言い争い。

「バカ言ってんじゃねえよ!なんで俺があやまんだよっ」

「おいおい、雲行きあやしーぞ」

やっぱりか…。光は溜め息混じりに呟いた。

「だってあれから大変だったのよ!?勝手に殴って勝手に一人で帰るなんてひどいじゃん!」

「知るか。あんな便所虫みてーな男。殺してもたんねえよ」

便所虫?優紀ちゃんの彼氏の事だろうか。光は優紀と彼氏の話をした事が無いので知る由も無い。

「何があったの?何されたの?」

「………言いたくねえ」

「なんでよ。言わなきゃわかんないじゃないっ」

「ムカついたから殴ったんだよっ」

それを聞くとつくしは道明寺を平手で叩いた。

「なにすんだてめえっ」

「ムカついたから殴った」

あぁ、もう。二人のケンカがまた始まるのか。この二人って実は似た者同士なんじゃ、そう思ってしまうくらいだ。

「あたしもあの中塚ってひとキライ。正直あんたが殴ったとこみてスッキリした。でもそれとこれとは別。どんな理由あるにせよ暴力はよくないっ」

prev next

bkm
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -