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「光!喜べ!牧野がとうとう司と付き合う事にしたぞ!」

結局道明寺家のゲストルームに泊まった4人。当然部屋は別々だ。そして光はノックも無しに扉を開けられて、しかも大声を出す婚約者の声を聞き、眉間に皺を寄せた。

「いつまで寝てんだよ!起きろって!」

「…あぁ、もうっ…頭叩くな!」

西門の手を振り払って、光は叩かれた額を擦った。体を起こして手櫛で髪を整えて目の前の西門を睨みつける。

「…あんたは人を起こす時叩かなきゃ起こせないのか…」

「だってテンション上がるだろ!俺らずっと司の面倒見ていかなきゃいけねーと思ってたんだぞ?それが解放!司もようやく一人前の男になったわけだ!今夜は盛大に飲むからな!」

テンション高い。声でかい。思わず耳を塞ぎたくなった。もうつくしがいいならそれで良いんだってば…。あぁー…昨日下着姿のまま寝てしまったのか。ようやくはっきりしてきた頭でそれに気が付いた。

「…総二郎さん、そこのシャツ取って下さい……あ、時間やばい。一回家に帰らないと…」

「ほらよ」

西門が投げて寄越したシャツに腕を通す。光は男が居る前で着替える。それを見て西門は頭の中でぼんやりと思う。口を開かなきゃちゃんと女に見えるのだから不思議だ。女と思ってなきゃできねぇーしな。

「…人が着替える姿じっと見ちゃって、朝から欲情?男は大変だねぇ」

「…お前っ…ホントに惜しいわっ……口開かなきゃ…」

まるで涙を堪える仕草のように西門は目を押さえた。

「ちょっと!何も泣く事ないでしょーが!」

「嘘だよ、ばーか」

「嘘だって事は知ってるけど、泣かれる程残念なつもりはない!」

これはいつもの光景。光が楽しんでいる風景。大事な場所。ずっとこのままでいられない事は分かっている光だが、そんな中で光の心の一部が変わって行くのはこの後少しの事。それは本人さえも気付いていなかった。

「総二郎さーん」

「ん?」

「何でもなーい」

「何だっての」

「私、この時間が楽しいからこそ夢を叶える為に頑張れる!」



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bkm
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