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「つくし!待たせてごめん!先生に呼ばれちゃって――あれ、総二郎さんとあきらさんも居たんだ」

隣失礼、と光はつくしの隣に座った。待ち合わせの時間を5分程過ぎた頃だった。

「光には後で話すわ」

何の話だか分からないのだけれど、まぁそれでもいいかと光バッグからお弁当を取り出した。

「つくし。約束通り作って来たよ、お弁当。和也君も良かったら食べて」

「あたしもだよー」

「ありがとう、僕のもあげるよー」

気分はピクニックで光とつくしはお弁当の見せ合いっこをした。光のお弁当を見てつくしは溜め息を一つ。

「…本当にお嬢様は料理も出来るんだねぇ…」

「いやいや、ここまで出来るやつはいねぇよ。なぁ、光。何でお前弁当作れんの?」

お重に詰められたおかずは一朝一夕に作れるものはない。しかも完全に和食。これを作るとなるとかなりの時間がかかっただろうに。

「…花嫁修業。と言っても和食しか作れないよ。なんせおばあ様仕込みだからね」

花嫁修業…。そういえば光と西門の二人も不本意な婚約をしている身だったことを思い出した。

「ね、三人とも食べない?こんなの食べたことないでしょっ」

美作はつくしの作っただし巻き卵を手に取った。西門はと言うとそれは食えないと言うように光の弁当を指さした。取れと?うん、そういう会話を目でして、光は渋々取り皿に自分の作ったおかずを入れて西門に渡した。皆でうまいなと喋っていれば後ろから道明寺が歩いてきた。

「どこにもいねーと思ったらこんな所にいたんかよ」

つくしはそっと道明寺から視線を逸らした。

「あっ、そうだっ。ねぇ道明寺。みんなが騒いでたけど、彼女ができたって本当!?」

空気の読めていない和也だったが、道明寺はそれを肯定した。

「ま、マジだったんかよっ!?」

え?彼女ってえ?光は首を傾げた。事情を知らない光。まさかシゲルさんと付き合う事にしたのだろうか。

「よかったね、おめでと」

「おまえに言われたかねーよ」

その時のつくしの寂しそうな顔を光は見ていた。おわった、つくしがそう呟いた気がした。つくしが道明寺さんを気になっているのは確かだと思っていた。だから今回の事は、つくしは身を引いたのかもしれない。自分の中じゃ考えられない事は起こってキャパシティーオーバーしてしまった。それは私が頑張っても理解出来ない事。もしかしたら道明寺さんの為を思ってかもしれない。私もいつか総二郎さんの為を思って身を引く事があるんだろうか。

「光。学生華道――主催の大会で最優秀賞ですって、おめでとう」

「…ありがとうございます」

出展した作品が最優秀賞を取った。当然嬉しいし、誰かに自慢もしたくなる。それと同時に周囲から聞こえてくる。どうせ、宮永の子供だから特別な何か――…私の実力はまだ周囲を納得させられる程ではない。実力で認められたら…私は全てを断ち切って、身を引けるかもしれない。



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bkm
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