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西門と美作は休憩がてらつくしを近くの喫茶店へ連れて行く。当然それに光も着いて行った。席についても西門と美作の二人はぐったりとしている。シゲルへの攻め方を間違えて、結局無駄足に終わった。精神的にもショックは大きい。

「大丈夫…?」

「……だいじょうぶじゃねーよ」

「なんなんだあの女、バケモンか」

それ私にも言っているのか?光は眉間に皺を寄せて西門を睨んだ。

「――なんで道明寺のためにそこまで…」

「おまえがボサーッとしてっからだよ」

西門のきつい物言いにつくしはビクリと身体をこわばらせた。

「おまえなーそりゃ司に婚約者はいるって俺も言ったけど、おまえがその気になりゃブッ壊せんだぜ。かけおちでも何でもして」

「第三者の俺らじゃなんともなんねーよ。司がおまえをあんなに想ってんだぜーそりゃキョーボーだし、バカだし、先は大変だけどよ」

「見ちゃいらんねーんだよ。なんとかなんねーのかよっ」

一方的につくしを攻めすぎだよ、小さく呟いた光の声は届かない。

「あの雨の日――あいつずぶ濡れで帰ってきたけど、何があったんだよ」

「道明寺をふった」

「ふ…ふった?」

初めて聞くそれに聞いていた三人は驚いた。

「シゲルさんのほうが似合ってるって言った」

「おま…っ。そりゃねーだろっ!すこしは司の気持ち考えてやれよっ」

「じゃあ、西門さんと美作さんに聞くけどっ、あたしの気持ち考えてくれたことある!?」

「ちょっと、皆落ち着いてよ…」

一応店内なんだし。熱くなるつくし。つくしの言い分も分かるけれど、この場合西門の言い分も分かる。

「あんたら二人ポンポン言いたいこと言うけどっ、あんな超金持ち息子であんなにおっかない母親がいて、その母親が5千万円で司をあきらめてくれって言われた貧乏人の気持ち分かる!?」

「5千万円…?受け取ったのか、それ」

受け取るわけないでしょーが!つくしは大声をあげる。だから、そろそろ静かにしてもらわないと、店に迷惑がかかるから。

「なんでもらっとかねーんだよ。やめんなら同じことだろ」

「おまえんち一生ビンボーだぜ」

「あのねぇ、二人共。そういう問題じゃないでしょうが」

呆れるように光は言葉を呟いた。あきれ返ってもう言葉も出ませんって。光は額に手を当てた。

「お金はどーでもいいのっ!ああいう金持ち体質に鳥肌が立つのよっ――あたしが一体なにしたっていうのよ…せめないでよ…もーいいの」

つくしは身体を震わせて目には涙を溜めていた。つくしがいいのならそれでいい。私には分からない葛藤がつくしの中にはあった。それの結果なのだ。

「あーあ。二人がつくし泣かせた」

責められてうっと視線を逸らした二人は少し考えたように数回頷いた。

「……よっしゃ。わかった。もう言わねー」

「泣くなよ。そーだよな。おまえにゃ荷が重過ぎるよなあ」

「けっこう司と滋合うかもしんねーな。アブノーマル同士。牧野後悔してさびしくなったら俺が遊んでやるよ」

「いやだよっ。西門さんなんて。妊娠しちゃう」

「確かにそれはそうだ。つくし、気をつけて」

光は小さく笑った。それがつくしが選んだ答え。大丈夫、私は責めたりしない。そりゃ応援はしていたけれど、もうつくしが笑っていられれば良いと思うんだ。



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bkm
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