「――そうか、そうよね、ごめんね。私一人っ子だからどっか一人よがりで、こうだから友達もできないのよね。迷惑かけてるよね」
「ちょこっとだけ迷惑ですけど、たいしてかけてません」
何それと光は小さく笑った。つくしらしいんだから。
「ほんとに?じゃ協力してくれる?」
「はいっしますっ」
「「え?」」
つくしと光の言葉が重なった瞬間だった。今なんて言った?お互いそう思った。そしてシゲルはパァと顔を明るくさせた。
「やったあ!うれしい!」
「あ、あの」
「こういうの夢だったの!」
「いや、ちょっと」
シゲルは喜びのあまりつくしの話を聞いてはいない。
「よく小説やドラマとかであるじゃなーい!恋の悩みを友達に相談したりすんのっ。あーゆーの1回やってみたかったのよね〜!」
シゲルは喜んでいた。…私も恋の悩みではないが友達と1回やってみたかった、というのは多々あった為に自分を見ているようでなんとなく何も言えない。じゃない、つくし!光はつくしの腕を小突いた。これは言っておかないといけないでしょうが。
「…あのォ…でもでも」
「え?なーに」
「え…えーと、こんなこと言い辛いんですけど、あたし、あの――道明寺に好きだと言われたことが…あるん…ですけど…」
後半小声だけれどなんとか言えた、よしつくし頑張った。光は見えない所で小さくガッツポーズ。
「マジ?でもつくしは好きじゃないんだよね?」
「あっあたしはもう別に全然っ!」
ならいいじゃんと言うシゲル。それを受けるつくし。光はそれをジッと見ていた。ねぇ、つくし。もう別にって何?“もう”って事は“前は”違ったの?光は立ち上がった。
「…私、もうそろそろ学校戻ります。取らなきゃいけない授業があるので。それじゃあ、つくし、えっと大河原さん」
「やーね、シゲルでいいわよ!」
「それじゃあ、シゲルさん」
じゃーねーまたねーそんな声を背で受けて光は歩き出した。シゲルさんは悪い人ではなさそうだと思った。猪突猛進タイプで人の話を聞かないとは思ったけれども。つくしは本当にそれでいいの?二人を応援しても良いの?つくしはまだ見込みがあるんだから、頑張れるんだから。私が叶えられなかった夢、叶えられるかもしれないのに。それが少し羨ましいと思った。
終
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