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「…私達は婚約してるでしょ。いつか結婚するかもしれない。やっぱりその時、少しでも気に入ってる相手の方が良いよね。嫌いな人とは結婚したくないし」

「…そりゃそーだな。本命じゃなくても、嫌いな奴よりは気に入っている奴の方が良いって考えると俺らは恵まれてる方かもな」

「…私の周りに居る誰かが嫌いな人と結婚させられたりするんだろうか。そう考えると、何か恐い」

今皆で笑っている。1年前じゃ想像出来なかった。英徳で友達が出来て、友達とは少し違うけれどよく集まる人達も出来た。冗談言ったりお茶をしたり、皆でわいわいする人達が出来た事。今がすごく楽しいと思える。でも、将来道明寺さんが、花沢さんが、あきらさんが、…総二郎さんが嫌な相手と結婚させられた、と聞いたら私はショックを受けるだろう。

「…結局俺らには俺らの苦労があるって事だろ。でもな、一般人にもそういう苦労があるかもしれないだろ」

「そういう苦労?」

「俺らが知らない苦労を一般人は知ってるけど、俺らの苦労も一般人は知らない。結局どう転んでも人間は苦労するって事だ」

そっか…。そういうものか。光は小さく微笑んだ。

「さて、そろそろ夜の時間か」

「…総二郎さん、溜まってるの?まさか、それしたいが為に呼んだ?」

「何言ってんだよ、お前煙草吸いたい頃だと思ったんだよ」

「何、それ!随分と自分本位ですこと」

私は恵まれている、自分に言いかせる。

「体の相性だって悪くない、やっぱり俺らは恵まれてるな」

「いいねぇ、スーツ。ネクタイじゃないのが残念」

光はそっと西門の襟に手を伸ばしボタンを一つ外した。

「お前のその性格。空気読めない感じもまた面白い。俺もねドレスは嫌いじゃない。ストッキングを破るのがいい」

「へんたーい!」

「その変態が好きなのはお前」

「変態好きを気に入ってるのは総二郎さんだよ?」

今が楽しければ良いじゃない、そう考える時が今の私なのかもしれない。将来の事とか忘れて今だけを楽しんだって良いじゃない。だって、私の人生なんだから。



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