「ささ、ここが私の部屋。まぁ、見せるような物は何も無いんだけどね」
部屋に入るとまずその広さに驚いた。丸い窓とテラスに出れる扉がある和風チックな部屋。高い天井と生けられた華、ベッドにテレビ、テーブル。小さなラック。女の子の部屋にしてはやけにシンプルだった。が、テレビで見るような高級旅館に見えるような気もしなくもない。
「家和洋折衷って言うか、増改築してて変な感じでしょう?」
確かにテラスはあるがウッドデッキでそこまで変な印象は受けないが、緊張する空気につくしと優紀は自然と正座をしていた。
「足崩して良いよ。後何飲む?」
な、何でもいいです、お構いなく…そう言うと光は笑って紅茶とケーキを使用人に頼んでいた。
「つくしがパーティーで着れそうな服持って来ようか」
「光は何着るの?」
「ドレス着るかな。でもある程度は持ってるから貸すし、それとも着物がいい?私も準備があるから着付けしてあげられないけど、覚えたでしょう?」
「無理無理無理!」
もう忘れてしまったって。それに着物の値段なんか恐ろしくて聞けない。じゃあ、ドレスか。光はすぐに使用人を呼んでドレスの形を伝えると次から次へと運ばれてくるドレスにつくしと優紀は目を回しそうになった。
「…ね、ねぇ、光ちゃん。この中のドレスで一番安いの聞いても良い…?」
「んとね…これ。これは特注じゃなくて普通に買ったやつで…えっと、26万…?」
ひぃ!と悲鳴をあげる二人を見て光も笑った。
「私もこれが一番安いのって驚いてる。でもね、ちゃんとした物を着ていないと怒られるんだよ〜」
結局つくしに似合うドレスを見つける事は出来なかった。細身の光特注の服を着こなす事が出来なかった。散らかったままの部屋で光達は満足するまで喋り、お茶を飲み、ケーキを食べ、笑い合っていた。
終