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光は西門の電話を受けて着物を着たまま走り出した。もうすぐ花展があるからどこにも行けないとか時間に余裕なんか無いとかそういう事を気にしている場合ではなかった。

「おぉー光、こっちこっち。何、お前着物着たまま」

「何じゃねぇーから!ふざけんな!いっつもいっつも事後報告で…っ…あぁ、もうっ…」

光は病院に着き、西門を見つけた瞬間文句を言いながら西門の服の布をきつく握り、下を向いた。そしてそのまま光は荒々しく涙を拭った。どうして病院になんか…。そこまで事態は急変していたなんて。

「今回の事は全部織部順平。モデルのジュンの仕業だったんだよ」

「もう主犯が誰とかどうでもいい。二人は無事なんだよね?」

「おう、司はまだ入院だろうが、牧野は数日で退院出来るだろうな」

「…今二人いい感じ?」

「少し放っておいてやれ」

その間に話を聞いていた。主犯の織部順平は道明寺に恨みを抱いていた。そこでつくしに近付いたのだ。わざと赤札を貼ったのもその順平。順平は仲間達と共謀し、人質としてつくしを誘拐し、道明寺を呼び出したのだ。道明寺はつくしが人質の手前一切手を出さなかったらしい。それで二人が話し込むのは分かる。ある程度の時間が経った後、光はつくしが居ると思われる道明寺の病室へと向かった。そこに桜子と和也の姿もあったが気にしない。むしろニヤニヤとしながら着いて来るF4メンバーの方が問題だ。あんた達もうお見舞いは済ませただろうし。

「…失礼します」

病室へ入った光をつくしは真っ先に見つけて近寄った。

「光!あ、あの…あたし――」

「…つくし、怪我は?大丈夫?」

「あ、うん…そこまで大きいのは――…」

それだけ聞いた後光はつくしの頬を引っ叩いた。ぴたりと止まる病室の空気。叩かれたつくしは呆然としていた。

「光!怪我人に何やってんだ!?」

「大丈夫。グーじゃない、パーだから」

「そういう問題じゃねぇよ!」

「…光…?」

目の前に居るつくしだから分かる。光は涙を堪えるように唇を噛み締めていたのだ。そして光はゆっくり言葉を吐く。

「…バカ、バカ、つくしバカっ」

「…ごめん、ごめんね…後、心配かけた」

つくしはゆっくり友人を抱きしめた。

「…何で叩き返さないの…フェアに行こうよ…つくしも叩き返せば良いじゃん…」

「…大丈夫だよ、どうせ明日目腫らしてお見舞い来るんでしょ、それでおあいこじゃん」



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bkm
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