「光ちゃん、どうも」
近い場所に居たのか美作は10分もしない内に店へとやって来た。そして光は立ち上がって頭を下げた。
「先日はお世話になりました、今日も御呼び立てして申し訳ありません」
相変わらずそういう所は堅苦しいと言うか、なんと言うか。苦笑いした後美作は座ってと手を出した。
「美作さん、何飲みますか?ここはモカがお勧めですよ」
美作は店内をざっと見回すと光の好みがすぐに分かる。和調だが型にはまると言うよりは和の最先端。だらしなくはしゃぐ若者がいない落ち着いた雰囲気。控え目に流れるのはクラシック。コーヒーの香りが漂う店内は席と席の間は広く取られており、人目につきにくい場所にあるせいか、知る人ぞ知る、と言う雰囲気だろう。
「じゃあ、モカにしようかな」
美作は光と同じモカを頼んで目の前の光をジッと見た。今日は何かの帰りなのだろう、和服姿だ。以前見た和服は遠目でちゃんと見た事はなかった為、新鮮だ。背筋をピンと伸ばし優雅な振る舞いは品の良さを漂わせる。極めつけは日本女性の美しさ。
「で、光ちゃん、俺に話って?」
「…お話と言うか、相談なんですけど構いませんか?」
「どうぞ」
光が相談?総二郎に言えない何かなんだろうか。美作は内心首を傾げた。
「…美作さんは何か困った事があったら、F4の皆さんに相談しますか?」
「え?相談?…いやぁ、そもそも俺らあんま困る事って無いからなぁ…」
金も女も勉学もスポーツも、どれを取っても困る事なんて無い。自分に困る事があるとすれば家での問題だけだ。
「…相談しなくても友達は友達ですか…?」
「そりゃね。もしかして牧野と何かあった?」
「…さっき総二郎さんからつくしが道明寺さんともめたと言う話を聞いたんですが、私つくしから何も聞いていないんです」
あぁ…それで悩んでいたのか。そういえばこの子が他の友人と喋っている所や、友人の話をしている所を聞いた事がなかった。悪い子ではないのに。友達がいないようには見えない。あぁ、昔色々あったから地味な格好をしていたと聞いたな。
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bkm