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道明寺にボコボコにされた挙句頭を打ったのか、静は倒れてからなかなか目を覚まさない。皆が付きっきりで様子を見ていた。

「う…ん…」

「静さん!?」

「起きたか!?静!しっかりしろよっ」

「いた…っ」

目を覚ました静は起き上がり額を押さえた。

「私…どうしたのかしら。たしかここ司の別荘よね」

「そーだよ、コソ泥かと思った司にボコボコにやられたんだよっ」

「――そういえば誰かに…」

「わりぃ静」

「司」

はっきりと目を覚ました静は久しぶりの友人達との再会に喜んだ。何でもカナダへ出張が決まり、子供の頃毎年に来ていたこの場所にまた皆が来ているのではないかと思い寄ったのだと言う。場所を変え、暖炉の前で静の話に花を咲かせる。光は救急箱を取り出してコブが出来たであろう静の額を手当てした。

「光ちゃん、ありがとう」

いいえ。救急箱をしまった後静は光の顔をジッと見る。何か?と首を傾げると静は満足気に微笑んだ。

「まさか皆と一緒に居るとは思っていなかったけど…今の光ちゃん、いい顔をしてるわ」

静は光の頬に手を伸ばした。光もその手に自分の手を添えて、はい、でも静さんには負けますと小さく微笑んだ。

「それで静。どのくらいここにいられんだよ!?」

「明日の朝にはトロントに向かって顧客にお会いするから――」

「マジ!?あと数時間じゃん。新年早々働いてんなあ。もう名弁護士かよ」

「まだまだ使いっぱしりよ。でも仕事はすごく充実してるわ。勉強の毎日よ」

そう言う静の顔はとても生き生きとしていた。あの家に囚われていた頃の静ではなかった。

「おっ、そーだ。静ッ!おまえなんとかってフランス人と結婚すんだろ!?」

道明寺の空気を読めていない発言に周りは焦る。が、光には何の事だかさっぱり分からなかった。

「もちろんお断りしたわよ。だって私まだまだやりたい事沢山あるんですもの。それに愛してもいない人の所へ嫁ぐなんて考えられないわ」

それを聞いて光は気まずそうに視線を逸らしてワインを飲んだ。

「マジかよ!?よかったなあ類!」

西門は類の背中をバシバシと叩いた。と、言う事は花沢さんは静さんが好き、という事で合っているのか?ん?つくしは?光の頭の上には疑問マークが浮かんでいた。

「いきおくれるぞ、そんなんじゃっ」

西門が類の背を叩き、むせて、美作が道明寺を殴って、いてーっと声をあげる。その光景を見て静はくすくすと楽しそうに笑っていた。

「あいかわらずねえ、あなた達。牧野さんもお元気そうね」

つくしは緊張しているのか声が裏返る。その時道明寺が散歩に行くぞと呟いた。それに合わせるように立ち上がる西門と美作。類と静は立ち上がらない。二人きりにするのか、光も立ち上がった。つくしは道明寺さんと散歩に行くらしい。なら私は部屋に帰ろうかな。

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bkm
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