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泣く姿が白々しく思えてしまう。光はそれを冷たい目で見ていたのだ。意を決した様に前へ一歩出た瞬間光は西門に肩を掴まれた。

「…光、落ち着け」

「…だっておかしいじゃん!反省してないし、誰も殴れないって言うなら私が殴るよ」

「司が行ったんだから大丈夫だ。それにあいつら殴った所で牧野が喜ぶと思うか?」

「………」

それを聞いて光は握った拳を解いた。確かにつくしは故意に人を傷つけたりはしないだろう。殴ってもよくやったと褒めてくれるような気がしなかった。

「それよりお前は優紀ちゃん、安心させてやれ」

光は小さく頷いた。ずっと外を見る優紀の隣に行き、その手を握った。その手は震えていた。

「…ごめん、優紀ちゃん、私また嘘ついた」

「光ちゃん…」

「…また守れなかった、でも、大丈夫。道明寺さん、つくしの事になるとすごいから」

光は安心させたいが為に笑ってみせるも優紀に笑顔が戻る事はない。それよりも光の不安が移ってしまったようだ。そんな中すすり泣く声が響く。

「うる――」

「あぁ!もう、うるせーよ!」

西門の声を遮って光の大声が響いた。さっきからシクシクシクシク泣きたいのはこっちだ!そもそも誰のせいだと思っているんだ。そんなに泣くのなら自分達で探しに行けば良い。誰も止めやしない。

「ったく、光は落ち着け。お前らもいつまでも泣いてんだよっ」

「だ…だって西門さん…化けて出られたらどうしよう」

「殺すな!」

「あたし達ちょっと意地悪してやろうと思っただけなのに、道明寺さんまでこんなことになるなんて」

その道明寺だけを心配しているくせに。時刻は朝方になっていた。道明寺がつくしを見つけて、避難していれば良いのだけれど。皆はそう思うしかなかった。

「ひとごろし」

「類っ!おまえまで縁起でもないこと言うなっっ!」

つくしは死んでない!光までも思わず類につっこんだ。勝手に殺しちゃだめ!

「…やりすぎなのよっ。牧野先輩になんかあったら許さないからねっ」

桜子がそう言う。が、桜子もやり過ぎた事があるくせに…優紀、類以外の誰もが思ったが口には出さなかった。ようやく捜索隊を派遣出来る天候になった時美作が声を出した。

「おいっ!帰ってきたぜっ!」

「つくし――っ!よかったあっ、心配したよ――っ!」

優紀は慌てて外へ行きつくしに飛びついた。

「ごめん心配かけて。途中で迷っちゃったんだけど、道明寺が見つけてくれて――」

「お…おかえりなさ――い」

その声にいち早く反応したのは道明寺だった。近くにあった花瓶に手を伸ばし花ごと水をかけた。

「てめーら!とっとと日本にかえれっっ!」

「しかしおまえたどこで一晩過ごしたの?ひょっとして山小屋辺りとかでありがちに裸になってあっためあっちゃったりして、まさかな」

その言葉につくしと道明寺の二人は顔を真っ赤にした。大きな怪我もなくつくしと道明寺は無事に帰ってきて、安堵の息を吐いた。



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