「お前よく見ると美人」
「知らなかったの?」
抱きしめられたまま光は振り返り西門の目をジッと見た。
「俺が案外良い婚約者見つけたのかもな、スタイルも悪かねぇし」
「残念なのはそこに愛が無い事」
「そんなもん最初から信じちゃいねぇよ」
「だよね。私もだ」
「そろそろそのうるさい口塞ぐけど?」
「アルコールにまみれてるけど、それでも良かったら」
西門の手はゆっくり光の頬を伝う。耳をなぞって後頭部にまで手が回れば後はすぐ。光は目を閉じてそれを待つ。唇が合わさったと同時にスタートゴング。舌を入れて角度を変えながら何度も深いキス。
「…慣れてんな、お前」
「総二郎さんには負ける」
お互い負けない。そんな表情が見られる。西門は光の膝裏に手を伸ばして一気に抱え上げた。
「ちょっ」
突然の事に光は慌てて西門の肩に手を伸ばした。
「何、お姫様抱っこには弱い?意外だなぁ」
「もうちょっと優しくエスコートしてくれないかなぁ」
「俺はベッドの上じゃないと優しく出来ないの」
バカじゃないの。光は笑みを浮かべた。前に総二郎さんが言っていた。女はやたらと思い出を作りたがる。それは本当の事だと思った。きっと総二郎さんに抱かれた頭の良い女の人は、もう二度と会う事もないだろう。だったらせめて大事な思い出として取っておこう。そう思うのだろう。
終
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