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「…ん、ここはどこだ…」

「はぁ。やっと目ぇ覚ましたか。お前途中で寝たんだぞ。お前ん家連れてってたらやばそうだから、そのまま俺ん家コースな」

あぁ、あまりにも楽しくて、少し寂しくて、飲みすぎてそのまま眠ってしまったのか。光はぼんやりする頭でそう予想した。どうせ明日から西門家で過ごす事になるんだ。今行った所で何も変わらない。自分の荷物ももう届いているだろう。車から降りて、西門に支えられる事無く光はフラフラと歩いた。

「大丈夫か?」

「うん。思考ははっきりしてるから大丈夫。…でもさ、煙草吸いたい」

「あぁー…じゃあ俺の部屋のテラスな。お前の部屋の前中庭だから誰が見るかわかんねぇし」

なんたってこの人は優しいんだ。自己中心かと思えば人の心配をするし。そんなに優しくしても後々面倒な事になっちゃうだけだよ、総二郎さん。光は心の中で呟いた。

「…髪結ぶ。臭いついちゃう」

西門の部屋についてすぐに煙草を吸おうとテラスに向かおうとした光は長い黒髪をまとめて持ち上げて髪ゴムを探せば後ろから抱きつかれた。突然の事に焦る必要も無い、相手は一人しかない。

「…総二郎さん、酔ってる?」

「いや、あんまし。でもよ、誘われてんなら食わなきゃ男の恥だろ」

「据え膳じゃないんだけどね、私。誘ってもいない」

後ろから抱きしめているにも関わらず光は焦る様子も無く、髪を結んだ。覗いた白いうなじに色気を感じ、噛み付きたくなる衝動を抑える。

「クリスマスイブ。邪魔する人間はいない男の部屋。二人きり。やる事は一つだろ?」

「…まさか、それ予想して私を部屋に?」

「冗談。俺、女に困ってねーし。ただ今なら行ける気がした」

行ける気がしたってどういう事よ、光は小さく笑った。別れる日が来るのだから思い出の一つくらい持っていても良いのかもしれない。私は一度でもこんな人と婚約した、と言う思い出くらい。

「じゃあさ、そういうムードに持って行ってよ。会話だけでね」

「…お前百戦錬磨の俺に挑戦状か?」

「そういう事。だって、今私達が何をしようが、私達の関係って何も変わらないし」

「いいねぇ。そういう女、俺好き。まぁ、光ならそう言ってくれると思ってたけどな」

私は彼に期待しない。期待してはいけない。

「初めてってわけでもないし淡白に行こうか」

愛情が無ければただお互いの性欲処理のだけ。子孫繁栄の為じゃない行為は獣以下。

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