07
2人きりのバックヤード
突然、抱き締められた私
いつもと様子の違うミケーレさん
沈黙が漂う空間
この状況…どっ、どうしたらいいの…?
沈黙に耐えかねた私が口を開こうとしたその瞬間―――――――…
───ドンドンドンドンッ…
「ミケーレさん?ここっすかっ!?」
不機嫌を露にした琢磨さんが勢いよくドアを開けた
「ちょっ、ミケーレさん!何してんすか!?そんな事してる暇があるなら、ちゃんと後片付けして下さいよ」
私を抱き締めたままの状態のミケーレさんを見て、またか…と言わんばかりに盛大な溜め息をついて言った
「ハハッ、琢磨何を言ってるんだい?仕事より美羽の方が大事に決まってるだろう?」
「はい、はい。そういう事ばっかしてっと、本当にセクハラで訴えられますよ?とにかく、早く片付けに戻って下さいよ!」
いつもの調子のミケーレさんに、琢磨さんは呆れた顔をしてバックヤードを出て行った
「…………………あ、すまなかったね、美羽」
ミケーレさんはハッとしたように、抱き締めていた腕を緩めた
そして、緩めたその手で私の頬にそっと触れる
―――――ドキッ…
深い珈琲色の瞳と視線が絡み合う
その瞳は、どこか悲しさを帯びているような…
「恭一に会えなくて寂しいのなら、明日、2号店へ行ってみたらどうだい?」
ミケーレさんからの突然の提案
「えっ…あっ、でも…恭一さんは仕事ですし…」
「客として会いに行くんだよ」
頬に触れてた手を離し、パチッとウィンクをしてみせた
「それなら、堂々と会いに行けるだろう?明日、ここは店休日だし、行ってみるといいよ。
――――じゃぁ、僕はそろそろ戻らないと、琢磨のカミナリが落ちそうだから行くよ」
フッと笑みを見せ私の頭をポンポンと叩くと、ミケーレさんはバックヤードを後にした
―――どうしたんだろう…?
何だかいつものミケーレさんと違った…?
でも、琢磨さんが来てからはいつもと同じだったよね…
思わずドキッとしちゃった///
……気のせいだよね?
それよりも明日
ホントに行ってもいいのかな…?
仕事の邪魔にならないかな?
でも、ちょっとくらい顔みたいな…
明日の事で頭がいっぱいになってしまっていた私は、ミケーレさんの異変はすっかり頭から抜け落ち、恭一さんを想うのだった
ミケーレさんの想いにも気付かず―――――――…
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