52 繋がる想い






彼女の口から零れた思いもよらない言葉に、自制心はあっけなく解放され





頭を抱え込むようにして美羽さんをきつく抱き締めると






そのまま扉に押し付けて、荒々しく唇を奪った







舌を絡め掬い取り、これまでの隙間を埋めるかのように




お互い、深く…長く求め合う







「……ん…ふぅ……」





静まり返った暗闇には、色めき立つ美羽さんの甘い吐息が溢れ





彼女が私を求めてくれる事で、胸を掠める棘が剥がれ落ちていくようだった









名残惜しさを感じながらゆっくり唇を離すと、交ざり合った銀糸が私達を繋ぐ








「…ッハァ…ハァ………恭一さんが…他の人に触れられるのは…ハァ………嫌です…」




乱れた呼吸を整えながら、ジャケットの背中部分を握り締める彼女






握り締めるその力が、気持ちの強さを教えてくれる







「…すみませんでした。あれは、きちんと断りましたから。もう、あなた以外には触れさせません……」







「本当ですか…?」






潤んだ瞳は、不安げに揺れていて






その不安を微塵も残してはいけないと







「私が触れたいと思うのは、美羽さんだけです」






いつもは伝えられない想いを紡ぐ








すると、美羽さんは泣き出しそうな顔で微笑んで






「私も……恭一さんだけです…」







その声を震わせた










まるで、誓いの言葉でも交わしたかのように私たちは見つめ合い




再びゆっくりと唇を重ね合わせる







今度は愛おしむように







静かに…優しく………

















「恭一さん…好き……」





柔らかく、何度も重なる口付けの合間に紡がれる魔法の言葉





言葉1つで、こんなにも心は満たされる









もっと、彼女に触れたい







想いを伝えたい








美羽さんに感化されたからか





高揚しているからか






“苦手だ”“出来ない”と思っていた感情たちが、不思議と次々溢れ出て






堪らない衝動に突き動かされた私は、美羽さんを抱き上げた








「キャッ!恭一さん!?」





一瞬の出来事に驚いた彼女は、私の首に咄嗟にしがみ付く







「早く温めないと風邪を引いてしまうでしょう?」






「…ぁ///」







「あなたが自分で言ったのですよ?」







すると、今頃恥ずかしくなったのか




美羽さんは思い出したように俯き、その顔を隠した













乱雑に積み上げられた本と本の間に畳まれていた布団を引っ張り出し




そこへ彼女をゆっくりと下ろす









「恭一さん…」






「美羽さん……誰よりもあなたを愛しています」








嘘、偽りのない想い







何の躊躇いもなくすんなりと、素直に零れ落ちる








この沸き上がる内に秘めた熱を、どうにか彼女に伝えたくて







そんな強い感覚に囚われたのは初めてで









込み上げる愛しさをぶつけるように







ただ、ただ…彼女を求め







愛を囁いた












何故、もっと早くこうしなかったのだろう…







そうすれば、彼女を傷付ける事も迷わす事もなかった









好きなら好きだと伝えればいい







愛していると伝えればいい










どんな自分も自分なのだと晒け出せばいい











本来の想いはとてもシンプルなはずなのに









難しくしていたのは自分自身だった











これからは伝えていこう








この想いを










再び結ばれたその手が、二度と離れぬように………



















bkm



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