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〜恭一side〜








――――ハァ…ハァッ…ッ、ゲホッゲホッ…ハァ…ハァ……








あれから、あちこち探し回ったが、美羽さんは見つからなかった





アモーレや彼女の家にも行ってみたが全て空振り







一体、何処へ行ったんだ…







こんな時間に1人だなんて…もし万が一、また何かあったら……






クソッ…肝心な時に携帯の充電は切れるし…











もしかすると、ミケーレさんの所?







いや、それはないか…





彼女の性格を考えれば、自ら頼りに行くような事はしないだろう







他に、美羽さんが行きそうな所は……












やはり、一度自宅に戻った方が良さそうだ





闇雲に探すより、携帯を使った方がずっと可能性はあるだろう







僅かな望みを託し、私はまた闇の中を走り出した










-----












アパートの前まで来ると、扉の前に何か黒い塊のようなものが見えた





薄暗くてハッキリとは見えないが






扉に近付くにつれて、“もしや…”という期待が確信へと変わっていく





















はぁー…良かった……








そこにいたのは、扉に寄り掛かって自分を抱き締めるように小さく蹲り、ウトウトしている美羽さんだった






やっと見つけた彼女の姿に心底安堵した私は



呼吸を整えながらしゃがみ込み、肩に手を添え、小声で呼び掛ける







「美羽さん…?」






すると、私の声に驚いたのか、美羽さんは全身をビクッと震わせると、弾けたように勢いよく顔を上げた






「きょ……ぃちさ…」




私を見つめる瞳がみるみる見開かれる







「こんなに冷たくして……ずっと、ここで待っていたのですか?」





初秋とはいえ、夜になればだいぶ冷え込む




冷えきった体がその時間の長さを物語っていた






「とにかく中に入りなさい」





話よりも、まずは彼女を温める事が最優先だと思い、美羽さんを立ち上がらせようとするが






「恭一さんっ!」




美羽さんは、すがりつくようにして私の首に抱き付いた










「恭一さん……好き………大好き…………」







まるで囈言のように繰り返す








この言葉がどれだけ嬉しかったことか…







もしかしたら私の元から去って行ってしまうのではないか…





そんな不安しかなかった私の心に、美羽さんの震えた声が染み込んでいく









けれど、今は抱き締め返したい衝動をグッとこらえ、美羽さんの背中を宥める様にゆっくりと擦(さす)る






「美羽さん…まずは家に入りましょう。このままでは風邪を引いてしまいます」





そう言って、絡んだ腕を外そうとするが



彼女は首を横に振り、さらに強くしがみついて離れない






「………美羽さん……お願いします」






私が思慮的である内に…






このままでは、私の理性も保っていられなくなってしまう









「美羽さん」

「…………………」














それから暫くの沈黙の後





分かってくれたのか…美羽さんはゆっくりと腕を緩め、私から離れた








「有り難うございます」





その彼女を立ち上がらせ、扉の内側へと招き入れる







「今、風呂のお湯を入れてきます。そしたら、珈琲でも淹れますから…」





彼女に背を向け、靴を脱ぐと



そのまま風呂場へ向う











────と、その時











トンッ…と背中に何か小さな衝撃を受けた









「美羽さん?」





腰に回された腕で、美羽さんが後ろから抱き付いているのだと分かる











「恭一さんが………温めて下さい……私の心も身体も…恭一さんじゃなきゃ……駄目なんです」






美羽さんの冷えて色の無くなった手は小刻みに震えていた











まずは、冷静に話しをして…と思っていたが




こんな台詞を言われて悠然としていられる程、私は出来た人間ではない








とうとう自分を抑えきれなくなった私は、美羽さんの手首を掴み取り





振り返ると、思い切り……壊れるくらいに強く抱き締めた――――……





















bkm



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