39 2人の男






──ピンポーン…






ミケーレさんの指示通り、私は彼の自宅へと来た










────カチャッ…






「わざわざすまなかったね、こんな時間に…」




訪問者が誰だか分かっていたのだろう、開口一番に謝罪の言葉を発した






「さぁ、中に入って」





電話でも感じていた事だが、彼の顔を見て確信する






………やはり、いい話ではないな






それは、電話で話せるような事でも



玄関先で話せるような事でもない







一体、美羽さんに何があったというのだ?






言い知れぬ不安を抱えながら、通されたリビングへ足を踏み入れ、促されたソファへ腰を下ろす










「今、珈琲でも入れるよ」



そのままキッチンへ向かおうとするミケーレさんを




「いえ、結構です」




逸る気持ちを抑えきれずに制した







「私は、お茶をしに来た訳ではありませんから。ミケーレさんも大事な話があるから、わざわざ私をここに呼んだのでしょう?」






「はは、恭一らしいね。……それじゃぁ、そうしようか」






私を一瞥し、確認すると




少し離れたところに座ったミケーレさんは、話を始めた―――――――………















−−−−−










目眩がした




今、立ち上がろうとしても間違いなく無理だろう








この事だったのだ




ミケーレさんのただならぬ雰囲気は…








昨夜起きた出来事を含め、これまで全ての話を聞かされた私は、その衝撃に言葉を失った



いや、正確には理解するだけで思考は精一杯だった











その男なら覚えがある





私がアマートへ移動する少し前から、しばしば店に来店していた客だ




いつも、美羽さんを舐め回すように眺めては、彼女に気安く話し掛けるこの男を不快に思っていた





けれど、客を無下に扱う訳にもいかず、なるべく気を付けて見ていたつもりだったが………







あの男が…









目を閉じ、瞼に浮かぶその男の顔に、握り拳にも力が入る










遣り切れない怒りを深呼吸で抑え込む








あの男への怒り





何も出来なかった不甲斐ない自分への怒り








何をしていたんだ私は…





離れていたからなんて言い訳にならない










彼女がどんな想いで2号店にやって来たのか



詩音さんに言われた事で、どれだけ不安を抱えていたのか



私に誤解されて、どんな気持ちでいたのか





恐怖に戦き、どれだけ助けを求めたのか………









そんな彼女の想いに何一つ気付いてやれなかった









情けない






私は、美羽さんの何を見ていたのだろう











「……ミケーレさん、美羽さんを助けて頂いて本当に有り難うございました」




今の私には、深々と頭を下げ、こんな台詞しか言う事が出来ない






「………君に謝ってもらわなくてもいい。恭一の為にした訳じゃないさ」




その妙に棘のある言い方が気になった





いつもの彼らしくない







「さっきまで、美羽はここに居たんだ。帰る時に慌てて帰ったから、携帯を忘れて行った」





それは聞かなくても、先程の話でおおよそ検討がついていたが、何故わざわざ…






「何故、慌てて帰ったんだと思う?」





ミケーレさんは何が言いたいのだ?



話の核が全く見えない







「いえ…分かりません。ミケーレさんは一体…」



「美羽にキスをしたからだよ」





「なっ……」




思いがけないミケーレさんの突然の言葉に、私はその場に凍り付いた
















bkm



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