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〜恭一side〜






あの日から何日が過ぎただろう…





情けない事に仕事場ではミスの連続



周りのスタッフたちには心配され





自宅に帰って来ても、灯りを付ける気力さえない始末だ




そして微睡むように眠り、また憂鬱な朝を迎える









そんな自堕落な日々が続き、数日たった今



徐々に冷静さを取り戻した私は、あの日の美羽さんを思い出していた










よくよく考えてみれば、彼女は何かを伝えようとしていたような気がする




けれどあの時の私は、たどたどしい彼女の言葉もバッサリ切り捨ててしまう程、余裕など持ち合わせていなかったし激昂していた






自分の中にこれ程までに激しい感情が眠っていたなんて……





美羽さんの事となると、自分でも驚くくらい様々な感情が溢れ出す





それは、これまで人と必要以上に関わる事を避けてきた私にとって戸惑いでもあった














しかし、いつまでもこのままではいられないだろう……





どんな運命が待っていようとも、受け入れなければならない






人間とは不思議な生き物だ





その先にあるのが地獄だとしても、真実を知りたがる







私はその地獄の審判を下されても、冷静でいられるだろうか…








あの印が事実だったとしても



それによって、嫉妬心に苛まれたとしても




彼女を手放す事など到底考えられないというのに――――――……















ゆっくり目を閉じ、深呼吸をする





暗闇の中、携帯に手を伸ばし、眩しいディスプレイの中から美羽さんを探す






暫くそのディスプレイを眺めた後



意を決した私は通話ボタンに手を掛けた













───トゥルルル…トゥルルル……







一回、二回…と無機質な機械音が静かに響く














「………はい」





!!!




何回目かのコールの後


携帯から聞こえてきたのは、いつもの彼女の声ではなく、バリトンの声だった







予想もしていなかった事態に声を失う





一瞬の間に様々な憶測が脳裏を過る









しかし、この声……







何処かで聞き覚えが………

















「………恭一?」




思い出せず考えを巡らせていると、電話の向こうの相手が私の名前を呼んだ







その時

名前を呼ぶイントネーションで、ふとある人物の顔が思い浮ぶ







「………ミケーレ…さん…ですか?」





尋ねるように聞くと、彼は短く



「あぁ」


と答えた








「何故、ミケーレさんが彼女の携帯を?」




「……………………」




電話の向こうのミケーレさんは押し黙ったまま、私の問いには答えない







「美羽さんは、そこにいないのですか?」





「……あぁ」



やっと口にした言葉も、私を満足させるものではなかった








「ミケーレさん。私は、美羽さんと連絡を取りたいのです。彼女は今、何処にいるのですか?」




要領を得ないミケーレさんの態度に業を煮やした私は、語気を強め言葉を投げると、それまで殆ど話さなかった彼が深呼吸をし、こう言った












「…………恭一…君に会って話したい事がある」









きっと、美羽さんの事だろう…




そんな事は考えなくても分かり切っている









ただ、このいつもとは全く違う真剣味を帯びた声に、私はただならぬ雰囲気を感じていた―――――………















bkm



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