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〜美羽side〜







もう泣きたくないのに




いつまでも泣いてなんていられないのに





涙は枯れる事を知らず溢れ出す






抑えようとすればするほど涙腺は緩くなり




抱えている不安を、もう止める事は出来なかった













「ズッ…グスッ……ごめっ、なさ…。すぐ…ズズッ、泣き止みっ…ますから……」



目を伏せ、手の甲にゴシゴシと涙を擦り付ける








早く泣き止まなきゃ…



これ以上、心配かけちゃいけない

















───フワッ…







「…!」




何とか心を落ち着けようと必死になっていたその時






すぐに“彼”だと分かる珈琲とは違う甘い香りが、私の鼻を掠めた






その香りに驚いて顔を上げる




「ミケ…レさ……?」






ミケーレさんが伸ばした両手の先には私の頬があって


そっと優しく包んでいる








「そんなに擦ったら、真っ赤になってしまうよ」




眉をハの字にして、唇を僅かに緩めると


親指で拭ってくれた

















「………………止めればいい」





「え?」



不意に発したミケーレさんの言葉の意味が分からず、私は尋ね返す










「そんなに辛いなら止めればいい……」







尋ね直しても言葉は同じ





私は耳を疑った










そのままミケーレさんの顔がゆっくりと私に近付いて来る















───キスされる











そう分かっているのに…













どこか辛そうな色を映した瞳





けれど、何か…決意を含んだような……





揺るぎない瞳










その瞳に囚われ






彼から目が逸らせない…





















私は、吸い込まれるようにゆっくりと瞼を閉じた―――――――――………







































そっと触れた唇から、ミケーレさんの想いが流れ込んでくるようだった





キュゥッ…っと切なくなって、また涙が零れる








短いキスの後



唇を離したミケーレさんと視線が絡むと




「僕のせいだね…」



そう言って、再び零れた涙を拭ってれた











「美羽が幸せならそれでいいと思っていたんだ…。2人の間に割り込むつもりも毛頭なかった。――――けど…」





頬に添えられていた手は、壊れ物を扱うようにそっと体を抱き締める







「けど、これ以上……君が悲しむ姿は見ていられないんだ…。辛いなら僕の所へくればいい……僕なら全力で美羽を受け止める」




すっぽりと覆われた胸の中で、彼の想いが響き渡る







ずっと…ミケーレさんの想いに私は救われていたんだ










抱き締めていた手は緩められ、私の手を取る






「美羽…僕は君を愛している」





甲にキスを1つ





まるで、紳士が淑女にするように……









曇りのない真っ直ぐな眼差しが私をじっと見つめる





「全部、忘れさせるから…」





そう言うと

手を握りしめたまま、再びミケーレさんの顔が近付いてくる
















その仕草に、自然と私も瞼を閉じようとしてハッとした








───グイッ!







両手でミケーレさんの胸を押し返す








「あ…あのっ……私……帰ります!……お世話になりました」





慌てて立ち上がり、側に置いてあったバックを拾うと、その場から逃げるようにして玄関へ急いだ







「美羽!!送って行くよ!」





後ろからミケーレさんの声が聞こえたけど、聞こえないフリをして家を飛び出した























―――ドクンドクンドクンドクン……








ハァ、ハァ、ハァ………









心臓が煩い




身体全部が心臓になったように大きく脈を打つ








吹き抜ける夜風の寒さも微塵も感じない程、身体が火照る















――――どうして私……










キスしちゃったんだろう……
















bkm



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