26 真実の顔
「うぅ…ん……」
あ…れ……?……ここ……どこ……?…
見慣れない真っ白な天井
何だか…頭が重い……
体が思うように動かない
―――――この感じ……前にもどこかで……
ぼんやりと白いモヤがかかったような重い頭を必死に働かせる
私…奈生さんの車に乗って……
それから……
紙コップの珈琲をもらって………
………そしたら急に眠たくなって………………
!!!
そこで、初めて気が付いた
さっきのも、この前も
もしかしたら…何か入っていたんじゃ……?
でも、どうして?
ダメだ…
思考を働かす力さえ続かない
それでも、ここがどこなのか確認しようとゆっくりと視線を巡らす
ベッドに横たわっている状態で背中にはフカフカな感触
辺りは広い空間
側には大きな出窓あって
窓からは、微かに明かりが入り込んでいる
どこかのホテル……?
─────カチャッ…
その時、部屋の扉が開く音がした
「やぁ…眠り姫、お目覚めですか?」
この声…
「……奈生さん?」
薄暗い部屋で顔までは見えないが、この声…ぼんやりと見える背格好は間違いなく奈生さんだ
足音がゆっくりとこちらに近付いてくる
「ピンポーン。正解」
そう言って、顔を覗かせた奈生さんはシャワーを浴びたのか、紺色のバスローブ姿で、雫の滴り落ちる髪をゴシゴシとタオルで拭いていた
「奈生さん……珈琲に…何か入れましたか?」
「おっ。察しがいいね、美羽ちゃん。まぁ、二回目だし、さすがに気付くか!?」
奈生さんはベッドの脇に腰を下ろし、そのまま話を続ける
「珈琲には、眠薬カプセルを入れたんだよ」
「眠薬カプセル?」
「よくドラマなんかで、クロロホルムを布に染み込ませて、口を塞いで気絶させるシーンあるだろ?本当はあれ、口に当てて嗅がせてもあんなにすぐ眠ってしまう事はないんだよ。クロロホルムは、それほど即効性のある薬じゃないんだ」
睡眠薬について話す奈生さんのその表情は、どこか楽しそうにも見える
「けどね、美羽ちゃんに飲ませた眠薬カプセルには驚くほどの催眠効果があってね、クロロホルムやハルシオンなんて比じゃないんだ。化学薬品じゃないし、副作用もない…人体への危険性もない…何かと都合のいい薬ってわけ」
それを私に…
どうして?
そんな事を笑みを浮かべながら平然と言ってしまう奈生さんに、私の本能が警告を鳴らし身体が震え出した
アブナイ………
―――――ハヤク、ハナレナイト…
けど…
真相を確かめなきゃ…
「…この前、私に何をしたんですか?」
震える声を必死に押さえ、私は奈生さんに尋ねた――――――……
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