25






「知りたければ教えてあげるよ…」







───あの日…何があったのか真相を聞く為、閉店後、奈生さんと会う約束をした









バックヤードで着替えを済ませ、ロッカーの内扉に付いている小さな鏡で結んでいた髪を下ろし、櫛で解かす





これから、何を聞かさせるのか…



緊張と不安が入り交じり、何だか胃がズキズキと痛かった








-------------








「美羽、もう帰るのかい?」




待ち合わせ場所に向かおうと裏口から外へ出ようとした時



ミケーレさんに呼び止められた






「あ、はい」




「実は今から、琢磨と秋の新作の試作をするんだが、良かったら味見役をしてもらえないかな…?」




「あ…ミケーレさん、ごめんなさい。今日はこれから、人と会う約束をしてるんです」





「そうかい…それは残念だ。美羽が居れば、琢磨と2人きりでむさ苦しい空間で作業せずに済むかと思ったんだが…。それじゃぁ、気を付けて行くんだよ」





そう言うと、ミケーレさんはポンポンと私の頭を軽く叩いた











あんな事があってから、ミケーレさんがいつも以上に私を心配してくれてるのがよく分かる





本当…ミケーレさんには支えられっぱなしだな…私





「はい。ホントにすみません。味見出来なくて残念ですけど…お詫びに明日は、キッチンのお手伝いさせて下さい」




「いいのかい?じゃぁ、明日はやる気も百倍だ」









「今日もやる気出して下さいよ」




そこへ、後ろから琢磨さんの呆れた声が飛んできた





「ほらっ、油売ってないでさっさと始めますよ!」




琢磨さんがミケーレさんの後ろ襟を掴み引きずるようにして、キッチンへと引っ張って行く





「折角、美羽と愛の語らいをしていたのに、琢磨もヤボな事をするねぇ。美羽、明日楽しみにしてるよ。Ciao〜!!」




「…ったく、ミケーレさんは、語らい過ぎですから…―――じゃぁな、美羽。気を付けて帰れよ」





そして、2人の姿はキッチンへと消えていった








ふふふっ……何だかんだ言いながら、いいコンビだよね、あの2人






可笑しくて口元から笑みが溢れた







------------------







奈生さんとの待ち合わせ場所は、大通りに面した24時間営業のファミレスだった





時間に遅れそうで小走りで先を急ぐ






すると、途中


公園の入り口付近にポツンと停めてある車に目が留まった




外灯しかない薄暗い闇の中にチカチカと浮かぶ赤いテールランプが、何とも不気味に見える







この辺、車なんてあんまり通らないのに…珍しいな…







少し違和感を感じつつも、急いでその車の脇を通り過ぎようとしたその時



車の助手席のウィンドウが下げられた







「お疲れ様、美羽ちゃん」




中から顔を出したのは、にっこりと笑う奈生さんだった






「奈生さん!?あれっ?待ち合わせ場所ってファミレスじゃ…」




「うん。そうなんだけど、よく考えたらアモーレからファミレスまで結構距離あるし、今日はたまたま車を持って来ていたから、迎えに来たんだ。さぁ、どうぞ。お姫様…」




「で、でも……」




「車だとファミレスまですぐそこだし、こんなとこで立ち話も何でしょ?ほら、早く…」







いいのかな…?
でも、ファミレスまでだし…







「じゃ、じゃぁ…お言葉に甘えて…」






奈生さんの言葉に少し躊躇いつつも、結局、私は助手席のドアを開け車へと乗り込んだ














bkm



top

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -