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〜ミケーレside〜
───バァァーーン!!!
何かを叩きつけたような音が店中に響き渡り、キッチンで片付けをしていた僕と琢磨は顔を見合わせた
何だ?
今の音は…?
慌てて音の聞こえた方向へ向かうと、ちょうど恭一がバックヤードから出て来たところだった
「恭一?来ていたんだね。ところで、凄い音がしたけど、何かあったのかい?」
僕の問いかけにゆっくりと顔をこちらに向けたが、僕の顔を一瞥するとスッと視線を外し、何も言わずに僕の横を通り過ぎて行く
「恭一!?」
後ろを振り返り呼び止めたが、恭一はそのまま店を出て行ってしまった
一体、どうしたというんだ…
普段、表情を変えない恭一があんな顔をするなんて
僕の胸はざわつき始める
その時、ふと視線をそのままバックヤードに向けると、中途半端に開いてるドアが目に入り
僕は、確かめるようにそっと中を覗いてみた
「……美羽!?」
足を踏み入れてすぐ僕の目に飛び込んできたのは、目の焦点が合わず、放心状態でしゃがみ込んでいた美羽の姿だった――――――――……
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〜美羽side〜
突然、私の体が大きく揺れる
「美羽!美羽っ!!」
誰かが私を呼んでる…?
誰………?
何も写さず、捉えず
ただ、宙をさ迷っていた目の焦点が合うと、目の前には心配そうな顔をしたミケーレさんがいた
「あぁ、良かった…。呼んでも反応がないから心配したよ…」
ミケーレさんはホッとしたように溜め息を着くと、はだけたままになっていた私の胸元の鈕を止め直してくれた
きっと、ミケーレさんだって見たはずなのに…
何も聞かず、何も言わず…ただ、ギュッと優しく私を包み込んでくれた
―――――あったかい……
トクン……トクン……トクン……トクン…
今まで凍り付いていた血液が再び巡るように、ミケーレさんの体温が体中に染み渡る
そして、その温かさに…私は咳を切ったように泣き出してしまった
じっと堪えていた哀しみが、ミケーレさんの優しさに触れて、とうとう涙となって零れてしまったのだった―――――――――…
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