20 激昂
まるで誇示するかのように、白い肌にくっきりと浮かび上がる深紅の印
それは、首筋から胸元にかけて無数にあった
シャツの一番上の鈕を留めても隠しきれない箇所には、ファンデーションでも塗っているのか、色が混ざり合いうっ薄らと痣のようになっている
私は、胸元にあるその印にそっと手を伸ばした
「…あ、あのっ……」
「…………………………」
この時、私の微かな願いにも似た彼女への信頼は、跡形もなく音を立てて崩れ去ったのだった――――――……
詩音さんが言っていた、昨日の男なのか……?
相馬竜司似…?
その有名人らしい男の顔もよく分からなかったが、どこの誰だかも分からない得体のしれない男が、彼女の体に触れたのだと思うと、目眩がするほど気が遠くなりそうだ
彼女は同意の上だったのか…?
だとしたら……
ドクンッ…――――――
ドクンッ――…ドクッ…ドクッ…
全身の血液が沸騰し、逆流するように体内を駆け巡る
駄目だ…抑えろ……
冷静に話を…
しかし、抑えようとすればする程、考えとは裏腹に沸き上がる感情…
―――――そして、体内を駆け巡る出口のない想いは、とうとう抑えきれなくなり暴発した
グイッ──
ダンッ───…バァーーン─────…
私は乱暴に彼女の腕を掴み取り
目の前にあるロッカーに押し付けると、彼女の後ろになったロッカーの扉を両方の拳で思い切り叩きつけた
突然の出来事に驚きを隠せないのか、放心状態の美羽さん
美羽さんの顔の横には、握られたままの両手の拳
ロッカーを叩きつけた痛みなど全く感じないくらい…この時の私は我を忘れていた
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