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〜奈生side〜
どんな手を使って彼女に近付こうか思案していた時、思わぬ展開が転がり込んできた
【各務恭一とうまくいっていないらしい…】
それは、俺にとって大きなチャンスだった
そして、店へわざと封筒を忘れて行き、彼女を食事へ誘うことに成功した
まずは第一段階
食事中…彼女の手に自分の手を重ねると、顔を林檎のように真っ赤にし、慌てていた彼女
新鮮な反応だな…
今まで俺の周りにはいなかったタイプだ
偶然、立ち寄ったカフェ
そこで初めて彼女を見た俺は、一目で彼女が気に入った
俺の胸の辺りまでしかない小さな背
触れたら折れてしまいそうな華奢な身体
黒目がちの大きな瞳
ねこっ毛の細い髪
何より、彼女の笑顔が俺を惹き付けた―――――――…
まだ2号店へ行く前だった各務恭一に向けられたあの笑顔…
まるで、汚れを知らない天使の微笑みのようだった
──────その笑顔を壊してしまいたい…
俺は、どこかおかしいのかもしれないな…
ただ普通に女を手に入れるだけではつまらない
あの整った綺麗な顔が、苦痛に歪む様を見てみたい
俺は、欲しいものは何がなんでも手に入れる主義だ
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今、俺の目の前で彼女はテーブルに突っ伏し、スヤスヤと寝息を立てている
酒に少々、睡眠薬を混ぜたからな…
――――――さて…
第二段階だな
上手くいく確率は、半分といったところか…?
けど、これが成功したら面白いことになるな…
身震いする程の高揚感を押さえ付け、俺は行動に移った
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睡眠薬の量は少量だった為、彼女は二時間程で目を覚ました
何も知らない彼女は、申し訳なさそうに何度も頭を下げている
俺は、まだ虚ろな彼女を自宅まで送ることにし、店の外へ出ようと彼女を支えながら通路を歩く
すると、一般客の席に座っていた客の一人が、こちらを食い入るようにじっと見ていた
なんだ?あいつは…?
見覚えがある顔ではないな…
俺は、その視線を気にしながらも、足元がフラつく彼女と共に店を後にしたのだった
この時、天は俺に見方をしてくれていたんだ――――――――――……
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