13 企み
〜ミケーレside〜
店休日の翌日の朝
彼女の顔を見て驚いた
目は真っ赤に充血し、まるで泣いた後のような疲れた顔をしていたからだ
彼女の白い陶器のような肌が、ますます痛々しさを際立たせていた
「美羽、おはよう♪」
努めて、いつも以上に明るく声を掛ける
「あっ、ミケーレさん…おはようございます。今日も1日、宜しくお願いします」
美羽は、一瞬合わせた目線をすぐに外し、顔を伏せるようにして僕の横を通り過ぎ、足早にバックヤードへと消えて行った
恭一と何かあったのだろうか…?
その日、美羽に聞き出そうとしたが、昨日の事に話を触れると、あからさまに避けるように話題を変えたり、その場から立ち去ろうとするのだった…
何かあったのは間違いないが…
――――落ち着くまで、そっとしておいた方がいいのかもしれないな…
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〜奈生side〜
今日の彼女は、明らかに様子がおかしかった
普段通りにしているんだろうが、その表情はどこか暗い
男か……
確か…各務恭一と言ったか…?
アモーレのチーフを任されている
現在は、2号店【アマート】へ出張中
その辺は、既にリサーチ済みだ
「美羽ちゃん、目が赤いけど…大丈夫?」
珈琲を運んできた彼女に声を掛ける
「あっ、やだ…実は昨日、夜中にDVD見てて号泣しちゃったんです。“ニュー・シネマ・パラダイス”って言う映画なんですけど…」
彼女は、右手で目を覆い隠すようにしながら言った
「あぁ、それなら俺も見たよ。ラストシーンは本当に感動するよね。何よりも、エンニオ・モリコーネの音楽が感動をより高めているんだよなー」
「奈生さん、随分詳しいんですね」
「映画は好きなんだ」
「そうなんですか…あっ、あんまりお喋りしてると怒られちゃうんで、私そろそろ行きますね。心配してくれてありがとうございました」
上手く笑えていない
貼り付けたような笑顔でペコッと頭を下げると、彼女はカウンターへと戻って行った
明らかな嘘
やはり、各務恭一と何かあったと見るべきだ
今日がチャンスかもしれないな…
仕掛けてみるか……
カップに残った珈琲をクイッと飲み干すと、鞄と伝票を手に取り会計レジへ向かった
“あるもの”を残して――――――――………
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