恋のはじまり
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<松田同タイトル番外編>









ずっと…この胸に温めていた想いを




ようやく“彼女”に伝える事が出来た







ずっとずっと



触れたくて堪らなかったその小さな身体を



ようやく自分の胸に収める事が出来た











――――けれど、それはほんの一瞬で……










あいつは……確か…





宇治何とか…いうお笑いコンビの片割れ…?








訳も解らぬまま、あっという間に連れ去られてしまった










返事も聞けぬまま…

















けど、振られるのは分かっていたんだ








いつも彼女を見てたから…









彼女の瞳に映っていたのは俺じゃない








まさか…お笑い芸人だったとは、思ってもみなかったがな…















-数日後-







彼女から、ご丁寧にも断りの返事をされた






申し訳なさそうな顔をして、何度も何度も謝って…






わざわざ言ってくれなくても良かったのに







けれど、俺は彼女のこういう“真っ直ぐなところ”に惹かれたんだった










今はまだ、胸が痛んで上手く笑えないけれど




これからは、彼女の幸せを影から願う1人の男でいよう…











いつか心から






“幸せそうで良かったな”









そう笑える日が来るのだろうか―――――――………





























「――――ま…さん?――…相馬さんっ!?…」






「……えっ!?…あぁ、ごめん、何…?」





「今日の撮影の衣装、こっちのシンプルなジャケットの方が、相馬さんには合うと思うんですけど、どうですか?」




「あぁ、美羽ちゃんに任せておいた方が、俺に聞くより間違いないだろ?」





「そ、そんなことないですよ///でも、じゃぁ、こっちにしちゃいますネ!」









美羽ちゃんは、俺を担当してくれているスタイリスト




俺よりも3つ年下だが、彼女のセンスは抜群であちらこちらから声の掛かる売れっ子スタイリストだ





それに、体力勝負のこの世界で、人一倍頑張っている努力家でもある





あの細い華奢な体のどこからそんなパワーが湧いてくるのだろう




見ていて、いつも不思議に思う










「……相馬さん…あの…失礼な事だとは思うんですが………大丈夫ですか?」




「え…!?」




一瞬、ドキリとする急な質問に俺の声は上擦ってしまう





「あ、いや…あの、ごめんなさい。何だか…ここ最近、相馬さんどこか上の空だったり、時々…辛そうな顔をしているんで……何かあったのかな?って…」





よく見てるんだな





「………まぁ、何も無かったと言えば嘘になるが……でも、大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」





表には出さないよう気を付けていたのに…それでも気付いた彼女に感心しながらも、格好悪い自分は見せたくなくて平静を装う





「いえっ!私こそ、出過ぎた真似してスミマセンでした。あっ!!」





そう言って頭を下げると、美羽ちゃんは突然大声を上げ



慌ただしく自分の鞄の中をガサガサと探り始めた








「相馬さん、これ…」




鞄から俺の掌にコロンと乗せられたモノは





“ハチミツ味の飴玉”






「確か、これ…相馬さん、好きでしたよね?前の撮影の時、何個も口にいっぱい入れて、リスみたいで可愛いなって…思って///こんなのじゃ、気休めにもならないでしょうけど…」





“相馬さんが早く元気になりますように…”






美羽ちゃんは、飴玉の乗せられた俺の手を両手で包み込み、まるで祈るようにしてそう呟いた






















――――トクンッ…













あれ?









――――トクン…トクン…トクン……










あぁ…この感じ……








前にも感じたことがある










それはきっと始まりの合図










俺は彼女を好きになる








そんな恋の予感






いや、確信を持って呟いたんだ











「ありがとう、美羽ちゃん」
















-fin-


bkm
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