手紙:松田(4/5P)
俺のアホ!!
何で気付かへんねん!
手紙の最後に書いてあった言葉……
―――――それは…俺が“好きや”言うと、照れたアイツが決まって返す言葉
【隆実のドアホ!!!】
それは“私も好きやで”の裏返し―――――……
そやった…アイツ、何でもない事はズケズケと言ってのけるけど、意外にもこういう事は言わん奴やった
あ゙ぁ〜…俺はアイツの何を見とんねん!!
ホンマど阿呆や
*
───ピンポーン…
「…ガチャ―――はい…」
インターフォンから聞こえた美羽の声
「ハァ…ハァ…美羽……俺や……ハァ、ちょぉ、顔貸せ…」
全力で走ったせいで、飛び出してしまうんやないかと思う程、跳ね上がった心臓を深呼吸で落ち着かせる
───カチャッ…
「ちょ、隆実!!どないしたん!?新幹線は?」
「ハァ…ハァ……こんっっのっ、ドあほうが!!!何やねん、お前!!あんな手紙寄越しおってからに……何で言わへんねん、俺に!好きやったら…ちゃんと俺に言えや!!伝えろや……お前が思ぅとる事………」
ホンマ頭にきとった
本音を言わへんコイツにも
それに気付かれへんかった自分自身にも…
「………そんなん…出来る訳ないやろ?本気で私に言うてくれたんやんか?芸人になりたいて………
あの時、笑ったんは泣きそうやったから…隆実が本気で言うとるの分かってしもぅたから、笑っとらんと…涙、溢れてしまいそやった……」
「美羽…」
「一緒について行く事も考えた。ここで待っとる事も考えた。隆実のプロポーズみたいなんも、めっちゃ…嬉しかってん。正直、凄く揺れた。
けどな?やっぱり私は、邪魔やと思うねん。隆実に本気で夢叶えて欲しいと思ぅとるからこそ………隆実の側にはおられへん」
「そんなん……お前が勝手にそう思ぅとるだけやろ?邪魔やなんて思わへん。俺の側で、俺を支えてくれや!!」
「何、言うとんねん!私に支えて貰おうなんざ、百年早いわ!!芸の道は厳しいんやで?ほんの一握りの人間しかなられへん!そんな道に進もうとしとんのやから、女になんか目もくれず、ガムシャラに進まなあかんねん!!1人で頑張らなあかんねん!!……私のことは気にせんと、思いっきり、やってきてや……ここから、成功をひっそりと願っとるから…」
「………美羽」
何で、お前は…そうやねん……
やっと、コイツの本音が聞けて
胸が苦しくなって、堪らんくなって…
気が付いたら
思いっきり抱き締めて
キスしとった……
「…んっ……ン……た…かみ……ちょ……ぉ…ん…」
美羽が堪らんくらい愛しくて
愛しくて……
息をするのも忘れるくらい
何度も、何度も唇を重ねた
どれくらいそうしていたのか…離れ難い想いを抑え、名残おしく唇を離す
すると美羽は、俺を見上げキッと睨みつけた
「ちょぉ、ここ、家の前やで!?誰かに見られたら…///」
「えぇやん。これから有名人になる松田隆実とキスしてました〜…言ぅてやればええねん」
「ぷっ…何やねん、その自信」
「自信やない。確信や!!お前にここまで言わせてしもたんや…やらな男やないやろ?絶対、日本一の芸人になったる!!―――――だから、ここから見とってな?」
お前がそう決めたんやったら、俺もそれに乗っかったる
そしたらアイツ……
泣きそうな顔して
けど、笑って
どっちやねん!!って突っ込みたくなる様な顔しとったけど
グシャグシャな最高の笑顔やった
あないな顔
可愛いいなんて思う物好きは、俺くらいなもんやろ(笑)
「お前…今、めっちゃ不細工な顔してんで?」
「なっ///人がせっかく感動しとったのに台無しやないか!!
隆実のドアホ!!ヽ(*`д´)ノ」
「あ〜…はい、はい。そんなに俺が好きか〜。可愛いいやっちゃな〜♪」
「ちゃうわ、ボケ!!アンタみたいな男、すぐに忘れて、も〜っとイケメンな彼氏作るんやから…………………………グスッ……」
「ハハ…怒ったり、泣いたり忙しい奴やな。美羽…お前は笑っとれ!でないと、何や調子狂うわ……」
美羽の涙を指の腹で拭う
抱き締めてやりたいのに…これ以上してはいけない気がした
「……うん、そやな。ゴメン……ズズッ…グスッ…―――――なぁ、隆実?」
「んっ?何や?」
「……めっちゃ好きやったで…」
「何で過去形やねん」
「だって、もう過去やん……ここからが、二人の新たなスタートや」
「…ほぅか。ほんなら俺も……美羽の事、めっっっちゃ好きやったで。お前は最高の女や!」
今、俺ん中にあるありったけの気持ちを込めて…
「ふふっ…当たり前やろ?」
「よぅ言うわ…」
俺は、自惚れる美羽の額に思いっ切りデコピンかましてやったんや―――――――…………
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