手紙:松田(1/5P)
慎と上京しようとしたあの日
慎にラブレターだけ渡して走り去って行ったあのコ
お前は“知らん子や”ゆぅとったけど、俺は知っとったで?
あのコは、いっつも遠くからお前を見とった…
まるで、電柱の影から見守る星飛雄馬の姉ちゃん……
あっ、いや…めっちゃ、健気で奥ゆかしい大和撫子みたいなコやったな
やっぱ、日本人女子は大和撫子でないとあかん!!
それに比べて、あのアホんだらときたら――――――……
「ギャハハ〜(*´∀`)ノシ ちょぉ、隆実!!それ何の冗談なん?あんたが芸人?あ〜…ひゃっひゃっひゃっ…(>∀<*)めっちゃ腹痛いわ〜!!」
「真面目に聞け、このアホ!大真面目な話や!!」
「ひぃ〜…くっくっくっ……だって、慎ちゃんはともかく、隆実はそんな性格とちゃうやろ!?大人しい隆実がなれる訳あらへんやん。冗談も休み休みゆぅてや!!―――それよりも、次の休みなんやけど……」
俺が、慎と芸人を目指すと決めた高三の夏
2年付き合うてきた美羽に“上京する”ゆぅたらアイツ……大笑いしよったヽ(*`д´)ノ
分かっとるよ…
俺には向いてへん世界やっちゅーことくらい…自分が一番よぉ分かっとる……
けど、慎と日本一の芸人になると腹くくったからには、お前にはちゃんと話をして、出来れば一番に応援して貰いたかったし、理解して貰いたかったんやないか…
せやのに、美羽ときたら…
人の大真面目な話、大笑いしよってからに…しまいには、話題変えられてうやむやになってしもたやないか!!
俺が東京へ行ってしもたら、離れ離れになってまうのに…アイツはそれで平気なんか?
Σ( ̄□ ̄;)
それとも、もう俺はお払い箱なんか!?
それから何べんも、これからの俺らの事話そうとしたんやけど
その度に、美羽にうまく交わされてもうて、俺はいつの間にかすっかり聞くんが怖くなっとった
そんな状態が続き、季節もすっかり冬になってしもたある日
「送ってくれて、ありがとう。この映画、めっちゃおもろかったな?また見に行こな?」
笑顔を見せ、俺に背を向け玄関へ向かう美羽
普段の態度はいつもと変わらへんのに、肝心な話をしようとすると俺から逃げる美羽
もぅ、アカンわ
白黒ハッキリせな…
俺は、美羽を呼び止めた
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