恋のはじまり
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淋しくても





哀しくても






さりげなく









何事もないかのように―――…










辛くても、腹が立っても







さりげなく










何事もないかのように…










笑みを忘れない









そんなあなたの強さに、心惹かれるのです――――……



















私があなたに恋をしたのは






あなたが失恋をした時だった







TVのワイドショーで知った松田さんの恋人との別れ





その当時、宇治抹茶が司会の番組にレギュラー出演していた私に





「ははっ、フラれてもうたわ」





サラサラの黒い髪をかき上げながら、明るく笑ってみせた








その後の仕事も、何事もなかったかのように笑いをとり




周りから別れを突っ込まれても、ネタにされても、辛い顔ひとつせず笑顔で交わしていた松田さん






そんなあなたを見てて、胸の奥がキュウって締め付けられたの






愛しさが溢れ出て





子供っぽい私が…おかしいけれど







“守りたい”









そう思った











松田さんが好き










これが、私の恋の始まり――――…















───あれから数ヶ月





時々、どこか憂いを帯びた表情を見せる松田さん





きっと、まだ…恋人が忘れられないんだろうな













「美羽ちゃんが好きなんだ」





突然の告白






抱き締められた逞しい腕





すっぽりと収まる広い胸板











「……相馬さん…」





そっと呟いた




あの人とは違う名前













――――でも…違う








違う…









困ったように笑う笑顔じゃない






ポンポンと頭を撫でてくれる大きな掌じゃない






“美羽ちゃん”




私を呼ぶ甘い魔法の声じゃない










「……ま…つだ…さ…」






溢れ出す愛しい人の名前








そう…私が欲しいのは1人だけ





















「ちょぉ、待ちぃ!!悪いけど、あんたに美羽ちゃんはやられへんわ」





突然、耳に届いた魔法の声






私の腕をグイグイ引っ張り、その先を歩く大きな背中に涙が零れそうになった―――…















誰もいない空き部屋






扉を閉めると、痛いくらいに強く抱き締められた






「あのっ…松田さん?どうして……」



キツく埋められた胸元から顔を上げ、彼に尋ねる






「…ん、堪忍な、美羽ちゃん…まぁ、そういう事や…」





「だって、前の彼女さんは…?忘れられないんじゃ…」




「えぇっ!?そぉなん?」




「そ、そぉなん?って…松田さん、前に言ってたじゃないですか!“フラれた”って…」








「あぁ…あれな?フラれたんは確かなんやけど…それは、俺がアカンかったからなんや」







――――それって…期待してもいいのかな?






「この状況で…しかも、さっき言うた事、考えれば分かるやろ?」







「全然分かりません…」








―――ううん。本当はもう分かってる










「どうして、もっと早く…」








――――自惚れじゃないよね?






「……ちゃんと言っ…て…松田さ……んンッ…」






次の瞬間

私の声は松田さんに奪われていた






「んっ……ハァ……松…ださん…」





彼から伝わる…流れ込む想い






「俺が、美羽ちゃんを好きになってしもたから、アカンかったんや。俺の心にグイグイ入ってきよるから…だから、フラれてしもた…。美羽ちゃん見とると、胸がいっぱいになってしもうて、なかなか言葉に出来ひんねん…乙女みたいやけど(笑)」






自嘲気味に笑うと、両手で私の頬を包み込み、真っ直ぐに見つめる





「どないしてくれるん?美羽ちゃん、責任取ってや。俺をこないな風にした責任…」











―――――愛しくて胸が痛い







「……いいですよ。私が一生かけて責任取ります」






「ふっ、まるでプロポーズみたいやな?ほんなら、ひとつ頼むわ…」






松田さんは、自分のオデコを私のオデコにコツンとくっつけて




とびきり甘く…優しいキスをしてくれた―――…










これからが、私達の恋の始まりなんだね
















-fin-


bkm
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